プロジェクト実施中のプロジェクト管理【PMの仕事 vol.3】

【PMの仕事 vol.3】プロジェクト実施中のプロジェクト管理

当メディア「プロマネ道場」でこれまでにご紹介してきたように、プロジェクトマネージャー(PM)の仕事は多岐にわたります。さまざまなスキルが求められるPMの仕事ですが、中でも最もプロマネの手腕が問われるのが「プロジェクト実施中」の管理フェーズです。

計画を立てるだけでなく、実行の最中で状況を見極め、適切な判断と対応を重ねることで、成果物の品質と納期、コストを守ることができる。つまり、この管理フェーズこそがプロジェクトマネージャーの本質的な役割と言えるでしょう。

この記事は、プロジェクトマネージャーの仕事内容を段階にわけて紹介していくシリーズの第3弾として、プロジェクト実施フェーズにおけるPMの主要な仕事を整理し、どのようなスキルや知識が求められるのかを解説しています。プロマネの業務内容を理解したいという方に向けて、PMの具体的な仕事内容を段階にわけて解説していますので、是非記事を最後までチェックしてみてください。

PMの仕事は実施中のプロジェクト管理フェーズで本領発揮される

プロジェクトが始動すると、計画通りに物事が進むとは限りません。むしろ計画通りに進行することの方が少ないでしょう。だからこそ、「実施フェーズ」でプロジェクトマネージャー(PM)の真価が問われると言えます。

トラブルや変更への即時対応、各関係者との調整、そして納期と品質の両立。QCDのすべてがリアルタイムで求められるこの段階において、PMは現場をリードし、成功へと導くプロジェクト管理の実践者でなければなりません。

フェーズ別のPMの仕事内容をおさらい

プロジェクトマネジメントは「プロジェクト開始前」「プロジェクト開始時」「プロジェクト実施中」「プロジェクト終結時」のフェーズで進んでいきます。PMの仕事内容は各フェーズで異なるため、それぞれで適切な対応が求められます。

プロジェクト開始前とプロジェクト開始時については、vol.1とvol.2で詳しく解説していますので、下記のリンクよりご確認ください。

【PMの仕事 vol.1】プロジェクト開始前の準備
・【PMの仕事 vol.2】キックオフミーティングとは? その目的と進め方を解説

vol.3の本記事では、実施フェーズにおけるPMの仕事の内容とプロジェクトマネジメントの流れを解説します。

高濱 幸喜

プロジェクトが計画通りに進むことはまずないと断言してよいでしょう。必ず何らかの要因で予定にない問題が発生します。計画が甘かったり、自分たちではどうしようもない外部要因(たとえばパンデミックの流行で業務推進ができないなど)に巻き込まれたり、その原因は様々です。

プロジェクトマネージャーには、その都度関係者と会話しながら、臨機応変に対処していくことが求められます。なお、プロジェクトの準備期間から開始、実施、そして終結までをPMBOKでは以下の5つのプロセスとして整理しています。
・立上げ
・計画
・実行
・コントロール
・終結

これらのプロセスをプロジェクトの期間に当てはめると、以下のようになります。

【PMの仕事】プロマネが管理するプロジェクトの12項目

プロジェクトの実施フェーズは、最も多くのプロジェクト管理が求められます。プロジェクト計画に則った進捗・品質・コストを達成するために、PMが管理する12の項目を順に紹介します。

1. スケジュール管理

スケジュール管理は、プロジェクト全体の進行が予定通りに進んでいるかどうかを定期的にトラックする活動です。アクティビティの定義、順序設定、リソース見積もり、期間見積もり、スケジュール作成、コントロールまでを含みます。

プロジェクトのスケジュール管理は、納期遵守のために必須の活動です。

2. スコープ管理

スコープ管理は、プロジェクトが当初合意した目的や要件、実施範囲から逸脱しないようにコントロールする活動です。顧客やプロジェクトチームからの要望に対応しつつ、不要な追加作業(スコープクリープ)を回避することで、成果物の質と効率を保ちます。

3. 変更管理

変更管理は、プロジェクト実施中に発生する仕様・計画の変更要望に対して、あらかじめ定めたプロセスに従って対応方針を決める活動です。変更管理には影響分析(変更によるスケジュールや予算への影響の分析)と承認手続きが伴います。

PMは関係者の合意を得ながら変更点を反映し、プロジェクト全体の整合性を保つ必要があります。柔軟で冷静な判断が求められる管理項目と言えます。

4. 課題管理

課題管理は、日々発生する問題の中で解決が必要なものに対して、放置せず迅速に解決へ導く対応をモニタリングし管理する活動です。課題は記録し、対応者と期限を明確にすることで、トラブルの再発防止にもつながります。PMの観察力と対処力が問われる管理項目です。

5. プロジェクト品質管理

プロジェクトの品質管理は、成果物が期待される品質水準を満たしているかを常にチェックする活動です。実際のテストやレビュー行為はプロジェクトメンバーが行いますが、それらのプロセスが適切に実施されているかどうかをチェックすることが品質管理となります。

設計レビューやテストを計画的に実施し、品質のブレを防ぎます。手戻りを減らすための継続的な確認がカギです。

6. 調達管理

調達管理は、外部パートナーとの契約、製品やサービスの調達などを管理する活動です。納品物の品質とスケジュールに問題が出ないよう、こまめな進捗確認と信頼関係の構築が必要です。ビジネス的な感覚も求められるでしょう。

7. 資源管理

資源管理は人的・物的リソースを最適に配分し、過不足なく活用するための活動です。特に人材の稼働状況を把握し、偏りや疲弊を防ぐことが大切です。稼働表やWBSといったツールを活用して、全体最適を目指します。

8. コスト管理

コスト管理は、予算の消化状況を把握し、コストの超過や不足が起きないように調整する活動です。プロジェクトメンバーの日々の稼働をモニターし、予定している稼働消化と実績を比較するなどします。問題があれば早期に対応策を講じます。

9. リスク管理

リスク管理は、プロジェクトの実行に伴い発生し得るリスクを事前に洗い出し、発生確率や影響度を評価したうえで対応策を準備することです。リスクマトリクスなどのツールを活用して、リスクを見える化することがポイントの一つと言えます。

10. ステークホルダー管理

ステークホルダー管理は、プロジェクトに影響のある関係者(ステークホルダー)に対し「影響力の強弱」、「プロジェクトに積極的/消極的」を評価し、結果をもとに各ステークホルダーに対する対応方針を決定、実施する活動です。

ステークホルダーに対するきめ細かいコミュニケーションが成功に少なからず影響します。

11. コミュニケーション管理

コミュニケーション管理は、プロジェクトで実施する情報共有の手段を定義し、管理する活動です。例えば会議体の定義、コミュニケーション手段(チャット、メール、電話など)、議事録のルールなどを定めます。

情報伝達のミスや齟齬を防ぎ、関係者間で認識を合わせるために不可欠です。

12. プロジェクト統合管理

プロジェクト統合管理は、各管理領域を横断的にコントロールし、プロジェクト全体の整合性を保つ活動です。プロジェクトの各プロセス全体に関連する活動が含まれています。

わかりやすいものとしては、「プロジェクトの指揮」が統合管理に含まれます。他には「プロジェクトの監視」という活動もあり、これは他の個別の管理情報を見て、総合的に判断していく活動になります。

また、プロジェクト憲章やプロジェクト計画書の作成の作成、プロジェクトの終結といったプロセスも統合管理に含まれています。優先順位を明確にし、全体の方向性の整合をとりながら統制を行います。プロジェクト全体の司令塔として、PMの意思決定力が問われる管理項目です。

ここに挙げた管理項目はどれも大事な内容であり、プロジェクトマネージャーはきっちりと管理していく必要があります。

ただし、全てのプロジェクトで12の管理を厳密に実施する必要があるかと言われれば必ずしもそうではありません。与えられた権限やプロジェクトの規模によっては省略できる管理項目もありますので、適切にテーラリングを行うことが大事です。

管理フェーズでプロジェクトマネージャーに求められるスキルと能力

プロジェクトマネージャーとして先にお伝えした管理項目をしっかりコントロールし活躍するためには、プロジェクトマネージャーに必要なスキルを備えていることが欠かせません。スケジュール調整や交渉力、課題解決力はもちろん、チームをまとめるリーダーシップや冷静な判断力も重要です。

実施フェーズでは、特にプロジェクトマネージャーに求められるスキルを総動員して対応しなければいけない場面が多くあるでしょう。つまり、プロマネとしての経験を含めて、幅広い能力が求められることになります。

プロジェクトマネージャーに必要なスキルについては、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

プロジェクトマネージャーに向いてる人と向いてない人の特徴

プロマネの業務には、個々の適性も大きく影響します。柔軟性があり、変化に前向きな人、責任を持って自律的に動ける人は、プロジェクトマネージャーに向いているタイプと言われています。

一方で、曖昧な状況にストレスを感じる人や、対人調整が苦手な人にとっては、PMの仕事は負担が大きいかもしれません。自分の性格や志向を理解しながら、向き不向きを判断することが大切です。

PMに向いてる人と向いてない人の特徴については、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

プロジェクトマネージャーは確かに多くのスキルや能力が求められます。また、性格によっては向き不向きもあると思います。

「まだ自分には足りない点が多いから準備できてからやる」というスタンスの方を否定はしませんが、経験上こういうマインドだと前に踏み出せない方が多かったように思います。

最初から全てを兼ね備えてPMになった人はおそらくいません。それよりはとにかくPMになって、経験を積む方が短期間でスキルを身に付けられると考えます。

現場指揮官としての役割がPMには求められる

プロジェクト実施フェーズのPMの仕事は、管理と判断の連続です。日々変わる状況に対応しながら、納期・品質・コストを守る責任を負う、まさに“現場指揮官”としての役割が求められます。そのためには、体系的な知識と実務経験の両方が必要です。PMを目指す方は、どの管理項目からでもいいので、座学での知識や現場での経験を積みながら一歩ずつ実力を磨いていきましょう。

記事の監修をしてくれた高濱幸喜さんが代表を務めるタカハマプロジェクトでは、プロジェクトマネジメントの実務に役立つトレーニングコースをご用意しております。プロジェクトマネジメントの基本を知りたい方、プロジェクトマネージャーとしてスキルアップしたいという方は、下記のボタンより、お気軽にお問合せください。

【PMの仕事シリーズ】

・vol.1:プロジェクト開始前の準備
・vol.2:キックオフミーティングとは? KOMの目的と進め方は?
・vol.3:プロジェクト実施中のプロジェクト管理