EVMとは、プロジェクトの計画値・出来高・実コストを比較し、進捗遅れやコスト超過を数値で把握するための「プロジェクト管理手法」です。
EVMの正式名称はEarned Value Managementで、日本語ではアーンドバリューマネジメント、または出来高管理と呼ばれます。
プロジェクトでは、「作業は進んでいるように見えるが、実はコストが超過している」「予定より遅れているが、影響度が数値で説明できない」といった問題が起こります。EVMを活用すると、PV・EV・AC・SPI・CPIなどの指標を使い、進捗とコストを同じ基準で判断しやすくなります。
この記事では、EVMの意味、PV・EV・AC・BACの基本指標、SV・CV・SPI・CPI・EACの計算式、プロジェクト管理での活用手順を解説します。WBSや進捗管理、コスト管理を実務で扱う方に向けて、EVMの見方と注意点を整理します。
EVMとは?意味・日本語訳・PMBOKとの関係をわかりやすく整理
EVMを理解するには、まず「何を比較する手法なのか」を押さえることが重要です。
EVMは、単に進捗率を見る方法ではありません。計画上の価値、実際に完了した作業の価値、実際にかかったコストを比較し、プロジェクトの状態を定量的に把握するための考え方です。
EVMは「Earned Value Management」の略
EVMは、Earned Value Managementの略です。日本語では、アーンドバリューマネジメント、または出来高管理と呼ばれます。
Earned Valueは「獲得価値」や「出来高」と訳されます。プロジェクトで完了した作業を、金額や工数などの価値に置き換えて評価する考え方です。
たとえば、予算100万円の作業のうち半分が完了していれば、単純化すると出来高は50万円分と考えられます。EVMでは、このように「どれだけ作業が進んだか」を予算価値に換算して評価します。
通常の進捗管理では、「50%完了」「予定より少し遅れている」といった表現になりがちです。一方、EVMでは、計画、出来高、実コストを数値で比較できるため、進捗遅れやコスト超過を説明しやすくなります。
EVMは進捗とコストを同じ基準で比較する管理手法
EVMの特徴は、進捗とコストを同じ基準で比較できることです。
プロジェクトでは、スケジュール上は進んでいるように見えても、予定以上のコストがかかっている場合があります。反対に、コストは抑えられていても、出来高が計画より少ない場合もあります。
EVMでは、以下の3つを比較します。
- 計画上、どれだけの価値を生み出す予定だったか
- 実際に、どれだけの価値を生み出したか
- 実際に、どれだけのコストがかかったか
この3つを比較することで、プロジェクトが「予定より進んでいるのか」「予定より遅れているのか」「予算内で進んでいるのか」「コスト超過傾向にあるのか」を判断できます。
つまり、EVMは進捗管理とコスト管理を別々に見るのではなく、同じ軸で統合的に見るための手法です。
PMBOKでは監視・コントロールやコスト管理と関係が深い
PMBOKとは、プロジェクトマネジメントに関する知識や実務の考え方を体系化したガイドです。EVMは、PMBOKにおいてもプロジェクトの監視・コントロールやコスト管理と関係が深い考え方です。
プロジェクトでは、計画を作るだけでなく、実行中に予定と実績の差を確認し、必要に応じて対策を取る必要があります。EVMは、その差を数値で把握するために使われます。
たとえば、予定より進捗が遅れている場合、PMはスケジュールの見直しや追加リソースの検討を行います。コスト効率が悪化している場合は、作業範囲、工数、外注費、品質対応などを確認します。
EVMは、数値を出すこと自体が目的ではありません。数値をもとに、PMが状況を判断し、関係者へ報告し、次の対策を決めるための管理手法です。
ITで使われるEVMにはEthereum Virtual Machineの意味もある
EVMという略語は、プロジェクト管理以外の文脈でも使われます。
特にITやブロックチェーンの領域では、EVMがEthereum Virtual Machine(イーサリアムバーチャルマシン)を指すことがあります。Ethereum Virtual Machineは、Ethereum上でスマートコントラクトを実行するための仮想環境を意味します。
そのため「『EVM』の意味を調べてみよう」と検索した場合、プロジェクト管理のEVMと、ブロックチェーン領域のEVMが混在することがあります。
この記事で扱うEVMは、プロジェクトマネジメントにおけるEarned Value Managementです。進捗管理、コスト管理、PMBOK、WBS、SPI、CPIといった文脈で使われるEVMは、アーンドバリューマネジメントを指します。
EVMは単なる計算手法ではなく、プロジェクトの現状を客観的に把握するための「共通言語」です。
現場では感覚的な進捗報告になりがちですが、EVMを活用することで、遅延やコスト超過の兆候を早い段階で把握しやすくなります。
EVMで使う基本指標|PV・EV・AC・BACの意味
EVMでは、いくつかの基本指標を使います。
最初に押さえたいのは、PV、EV、AC、BACです。これらは、EVMの計算式を理解するうえで土台になる指標です。
PV:Planned Valueは計画上の出来高
PVとは、Planned Valueの略です。日本語では、計画価値、または計画上の出来高と呼ばれます。
PVは、ある時点までに計画上どれだけの価値を生み出している予定だったかを示す指標です。
たとえば、総予算100万円のプロジェクトで、計画上50%まで完了している予定であれば、PVは50万円です。つまり、「この時点では、本来50万円分の作業が完了しているはず」という計画上の基準になります。
PVを設定するには、プロジェクト全体の予算を作業単位に分け、いつまでにどれだけ進める予定なのかを決めておく必要があります。
PVが曖昧だと、EVやACと比較しても、予定より進んでいるのか遅れているのかを判断しにくくなります。
EV:Earned Valueは実際に完了した作業の出来高
EVとは、Earned Valueの略です。日本語では、出来高、または獲得価値と呼ばれます。
EVは、実際に完了した作業を、あらかじめ設定した予算価値に換算した指標です。
たとえば、総予算100万円のプロジェクトで、実際に40%分の作業が完了している場合、EVは40万円です。実際にいくら支払ったかではなく、「完了した作業の価値」を見る点が重要です。
EVを求めるには、作業ごとの完了基準を明確にしておく必要があります。単に「進んでいる気がする」ではなく、どの成果物が完了したのか、どのワークパッケージが終わったのかを確認します。
一般的には、EVは以下のように計算されます。
EV = 作業の予算価値 × 実際の完了率
ただし、実務では完了率の判断が曖昧になるとEVの信頼性も下がります。そのため、WBSや完了条件を事前に整理しておくことが重要です。
AC:Actual Costは実際にかかったコスト
ACとは、Actual Costの略です。日本語では、実コスト、または実際コストと呼ばれます。
ACは、ある時点までに実際にかかったコストを示します。人件費、外注費、材料費、ツール費用、設備費など、プロジェクトで発生した実際の支出や工数を含みます。
たとえば、実際に完了した作業の出来高が40万円分だったとしても、その作業に60万円かかっていれば、ACは60万円です。この場合、出来高に対してコストが多くかかっているため、コスト効率が悪い状態と判断できます。
ACを正確に把握するには、実績工数や実コストを定期的に収集する仕組みが必要です。
EVMでは、EVとACを比較することで、コスト面で予算内に収まっているのか、超過傾向にあるのかを把握します。
BAC:Budget at Completionは完成時の総予算
BACとは、Budget at Completionの略です。日本語では、完成時総予算と呼ばれます。
BACは、プロジェクト完了時に予定している総予算です。プロジェクト全体を完了させるために、計画上いくら必要かを示します。
たとえば、プロジェクト全体の予算が1,000万円であれば、BACは1,000万円です。EVMでは、このBACを基準に、現時点の進捗やコスト効率を見ながら、完了時の総コストを予測します。
BACは、EACを計算する際にも使います。EACはEstimate at Completionの略で、現時点の実績を踏まえた完了時総コストの予測です。
BACが計画上の総予算であるのに対し、EACは実績を反映した予測値です。計画と予測を比較することで、プロジェクトが最終的に予算内に収まりそうかを判断できます。
PV・EV・ACをそろえるにはWBSと見積もりが必要
EVMを正しく使うには、PV・EV・ACを同じ基準で比較できる状態にする必要があります。
そのために重要なのが、WBSと見積もりです。
WBSとは、Work Breakdown Structureの略で、プロジェクトに必要な作業を階層的に分解する考え方です。WBSで作業を分解し、それぞれの作業に予算や工数を割り当てることで、PVやEVを設定しやすくなります。
たとえば、プロジェクト全体の予算だけが決まっていても、作業ごとの予算配分がなければ、どの作業がどれだけの価値を持つのか判断できません。
また、EVを測るには、作業ごとの完了条件も必要です。何をもって完了とするのかが曖昧なままでは、出来高を正しく判断できません。
EVMは、計算式だけを覚えても機能しません。WBS、見積もり、完了条件、実績収集の仕組みが整ってはじめて、進捗とコストを比較できる状態になります。
EVMの基本指標であるPV・EV・AC・BACの違い
ここまで解説したPV・EV・AC・BACの違いを整理すると、以下のようになります。
| 用語 | 正式名称 | 日本語での意味 | 何を示す指標か | 基本的な見方 |
|---|---|---|---|---|
| PV | Planned Value | 計画価値/計画上の出来高 | ある時点までに、計画上どれだけの価値を生み出している予定だったか | PVが基準となり、EVと比較することで進捗の遅れや進み具合を確認する |
| EV | Earned Value | 出来高/獲得価値 | 実際に完了した作業を、予算価値に換算したもの | EVがPVを下回ると、計画より進捗が遅れている可能性がある |
| AC | Actual Cost | 実コスト/実際コスト | ある時点までに、実際にかかったコスト | ACがEVを上回ると、出来高に対してコストがかかりすぎている可能性がある |
| BAC | Budget at Completion | 完成時総予算 | プロジェクト完了時に予定している総予算 | EACと比較することで、最終的に予算内で完了できそうかを確認する |
私が現場で見てきたプロジェクトでも、「進んでいるはずなのに、なぜか予算が足りない」という状況は少なくありませんでした。
すべてのプロジェクトで導入されていたわけではないのですが、EVMを採用していたプロジェクトでは、そうした感覚的な違和感を数値で確認し、早めに手を打つために活用されていました。
EVMの計算式|SV・CV・SPI・CPI・EACの見方
EVMでは、PV・EV・ACをもとに、複数の指標を計算します。
ここからは、SV、CV、SPI、CPI、EACの意味と計算式を整理します。指標は単に計算するだけではなく、数値の見方と次の判断につなげることが重要です。
SV:スケジュール差異は「EV-PV」で見る
SVとは、Schedule Varianceの略です。日本語では、スケジュール差異と呼ばれます。
SVは、実際の出来高であるEVと、計画上の出来高であるPVの差を示します。
計算式は以下です。
SV = EV − PV
SVがプラスの場合、計画より進んでいる状態です。
SVが0の場合、計画どおりに進んでいる状態です。
SVがマイナスの場合、計画より遅れている状態です。
たとえば、PVが500万円、EVが400万円の場合、SVは以下になります。
SV = 400万円 − 500万円 = −100万円
この場合、計画より100万円分の出来高が不足しているため、スケジュール面で遅れがあると判断できます。
ただし、SVは金額換算された差異です。日数の遅れそのものを直接示すわけではありません。遅れの影響を把握するには、スケジュール管理表やクリティカルパスもあわせて確認する必要があります。
CV:コスト差異は「EV-AC」で見る
CVとは、Cost Varianceの略です。日本語では、コスト差異と呼ばれます。
CVは、実際の出来高であるEVと、実際にかかったコストであるACの差を示します。
計算式は以下です。
CV = EV − AC
CVがプラスの場合、予定より少ないコストで成果を出せている状態です。
CVが0の場合、出来高と実コストが一致している状態です。
CVがマイナスの場合、出来高に対してコストがかかりすぎている状態です。
たとえば、EVが400万円、ACが450万円の場合、CVは以下になります。
CV = 400万円 − 450万円 = −50万円
この場合、400万円分の出来高を得るために450万円かかっているため、コスト超過傾向にあると判断できます。
CVがマイナスになった場合は、人員追加、外注費、手戻り、品質不良、作業範囲の拡大など、コスト増加の原因を確認する必要があります。
SPI:スケジュール効率は「EV÷PV」で見る
SPIとは、Schedule Performance Indexの略です。日本語では、スケジュール効率指数と呼ばれます。
SPIは、計画に対してどれだけの出来高を達成できているかを示す指標です。
計算式は以下です。
SPI = EV ÷ PV
SPIが1より大きい場合、計画より進んでいる状態です。
SPIが1の場合、計画どおりです。
SPIが1より小さい場合、計画より遅れている状態です。
たとえば、EVが400万円、PVが500万円の場合、SPIは以下になります。
SPI = 400万円 ÷ 500万円 = 0.8
この場合、計画に対して80%の出来高しか達成できていないため、スケジュール面で遅れがあると判断できます。
SPIは、複数プロジェクトや複数フェーズの進捗効率を比較する際にも使いやすい指標です。ただし、SPIだけで判断せず、どの作業が遅れているのか、後続タスクに影響があるのかを確認する必要があります。
CPI:コスト効率は「EV÷AC」で見る
CPIとは、Cost Performance Indexの略です。日本語では、コスト効率指数と呼ばれます。
CPIは、実際にかかったコストに対して、どれだけの出来高を得られているかを示す指標です。
計算式は以下です。
CPI = EV ÷ AC
CPIが1より大きい場合、コスト効率が良い状態です。
CPIが1の場合、出来高と実コストが一致している状態です。
CPIが1より小さい場合、コスト効率が悪い状態です。
たとえば、EVが400万円、ACが500万円の場合、CPIは以下になります。
CPI = 400万円 ÷ 500万円 = 0.8
この場合、1円のコストに対して0.8円分の出来高しか得られていないため、コスト効率が悪化していると判断できます。
CPIが低い場合は、作業効率、手戻り、外注費、要件変更、品質問題などを確認しましょう。CPIは、EACを予測する際にも重要な指標になります。
EAC:完了時総コストは前提に応じて予測する
EACとは、Estimate at Completionの略です。日本語では、完了時総コスト見積もりと呼ばれます。
EACは、現在の進捗やコスト実績を踏まえて、プロジェクト完了時に最終的にいくらかかりそうかを予測する指標です。
EACには複数の計算方法があります。どの式を使うかは、今後の作業がどのように進むと考えるかによって変わります。
代表的な考え方は以下です。
EACの主な計算式一覧
| 前提 | 計算式 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 現在のコスト効率が今後も続く | EAC = BAC ÷ CPI | 現在のCPIが今後も続くと考える場合 |
| 残作業は当初計画どおり進む | EAC = AC +(BAC − EV) | 過去のコスト超過が一時的で、今後は計画どおり進むと考える場合 |
| コスト効率とスケジュール効率の両方を考慮する | EAC = AC +{(BAC − EV)÷(CPI × SPI)} | コスト効率とスケジュール効率の両方が今後にも影響すると考える場合 |
EACは、1つの式だけで機械的に判断するものではありません。
たとえば、一時的なトラブルでコストが増えただけなのか、今後も同じ効率で進むのかによって、使う式は変わります。PMは、EACの前提を明確にしたうえで、関係者へ説明することが重要です。
簡単な例でPV・EV・ACの違いとEVMグラフの見方を確認する
簡単な例で、PV・EV・ACの違いを確認しましょう。
あるプロジェクトのBACが1,000万円だとします。5か月時点で、計画上は50%完了している予定だったため、PVは500万円です。
しかし、実際に完了している作業は40%分でした。この場合、EVは400万円です。さらに、実際にかかったコストが450万円だった場合、ACは450万円です。
このとき、各指標は以下になります。
| PV | 500万円 | 計画上は500万円分の作業が完了している予定 |
| EV | 400万円 | 実際には400万円分の作業が完了している |
| AC | 450万円 | 実際には450万円のコストがかかっている |
この場合、EVがPVを下回っているため、スケジュールは遅れています。また、ACがEVを上回っているため、コスト効率も悪化しています。
EVMグラフでは、PV・EV・ACを時系列で並べて確認します。EVがPVを下回っていれば進捗遅れ、ACがEVを上回っていればコスト超過傾向があると読み取れます。
ただし、グラフは状況を把握するための入口です。実際には、どの作業で遅れているのか、なぜコストが増えているのかを確認し、対策につなげる必要があります。
EVMで特に大事なのは、計算式よりも「何をもって完了とするか」を事前に決めておくことです。
現場では進捗率が担当者の感覚になりがちなので、WBSや成果物単位で完了条件をそろえることが重要です。
EVMをプロジェクト管理に活用する手順とメリット・注意点
EVMは、計算式を知っているだけでは実務で機能しません。
プロジェクト管理に活用するには、WBS、予算配分、実績収集、定例レビュー、判断ルールを整える必要があります。
ここでは、EVMをプロジェクト管理に取り入れる手順と、メリット・注意点を整理します。
手順1:WBSを作成し、作業ごとに予算・工数を割り当てる
EVMを使う最初の手順は、WBSを作成し、作業ごとに予算や工数を割り当てることです。
WBSがない状態では、どの作業にどれだけの価値があるのかを判断できません。EVMでは、作業単位ごとに計画値や出来高を見ます。そのため、プロジェクト全体を管理できる単位に分解しておく必要があります。
たとえば、Webサイト制作プロジェクトであれば、要件定義、デザイン、実装、テスト、公開準備などに分け、それぞれに予算や工数を割り当てます。
このとき、ワークパッケージの完了条件も明確にしておきます。完了条件が曖昧だと、EVを判断できません。
EVMは、WBSと見積もりがあってこそ機能します。計算式よりも先に、管理できる作業単位を整えることが重要です。
手順2:PV・EV・ACを定期的に収集する
次に、PV・EV・ACを定期的に収集します。
PVは計画上の出来高、EVは実際に完了した作業の出来高、ACは実際にかかったコストです。この3つを同じタイミングで確認することで、プロジェクトの状態を把握できます。
たとえば、週次や月次の定例会議で、各ワークパッケージの進捗、完了状況、実績工数、発生コストを確認します。
収集する際は、以下を決めておくとよいでしょう。
- 誰が実績を入力するのか
- いつ時点のデータを使うのか
- 完了率をどの基準で判断するのか
- 工数やコストをどの単位で集計するのか
- 定例会議でどの指標を確認するのか
データの取り方が毎回変わると、EVMの数値もぶれます。継続的に使うには、実績収集のルールを決めることが重要です。
手順3:SPI・CPI・EACを見て、遅延やコスト超過の予兆をつかむ
PV・EV・ACがそろったら、SPI、CPI、EACなどの指標を見て、プロジェクトの状態を判断します。
SPIが1を下回っていれば、スケジュール遅れの傾向があります。CPIが1を下回っていれば、コスト効率が悪化している可能性があります。EACがBACを大きく上回る場合は、完了時に予算超過となる可能性があります。
ただし、指標を見て終わりではありません。
PMは、数値をもとに原因を確認し、対策を検討する必要があります。
たとえば、SPIが低い場合は、遅れている作業、後続タスクへの影響、追加リソースの必要性を確認します。CPIが低い場合は、手戻り、外注費、作業効率、要件変更などを確認します。
EVMは、問題の発生を早期に見つけるための仕組みです。数値をきっかけに、次の判断や対策へつなげることが重要です。
EVMのメリットは、進捗とコストを同時に判断できること
EVMの大きなメリットは、進捗とコストを同時に判断できることです。
通常の進捗管理では、「作業が何%終わったか」に注目しがちです。しかし、進捗率だけでは、どれだけコストがかかっているかまでは見えません。
EVMを使うと、以下を定量的に把握できます。
- 計画に対して進んでいるか、遅れているか
- 出来高に対してコストがかかりすぎていないか
- 完了時に予算を超過しそうか
- スケジュール効率やコスト効率が悪化していないか
- 経営層や顧客に数値で状況を説明できるか
特に、複数部門や外部パートナーが関わるプロジェクトでは、感覚的な進捗報告だけでは合意形成が難しくなります。EVMを使えば、プロジェクトの状態を数値で説明しやすくなります。
EVMの注意点は、WBSや実績データが曖昧だと機能しないこと
EVMには注意点もあります。
最も重要なのは、WBSや実績データが曖昧だと機能しないことです。
たとえば、以下のような状態では、EVMの数値は信頼しにくくなります。
- WBSの粒度がバラバラ
- 作業ごとの予算配分がない
- 完了条件が曖昧
- 進捗率を感覚で入力している
- 実績工数やコストを定期的に収集していない
- 要件変更やスコープ変更が反映されていない
EVMは、正確なデータがあってはじめて意味を持ちます。見た目だけの数値を作っても、実態とズレていれば判断を誤る可能性があります。
また、小規模なプロジェクトでは、EVMの運用負荷が大きくなりすぎる場合もあります。プロジェクトの規模や目的に応じて、どこまでEVMを適用するかを判断することが大切です。
SPIやCPIの数値が悪いとき、現場では必ず何かしらの理由があります。手戻り、要件変更、見積もり不足など、数字の裏側にある原因を確認し、次の打ち手につなげることがPMの役割です。
EVMを活用し、プロジェクトの遅延とコスト超過を早期に見つけよう
EVMは、プロジェクトの遅延やコスト超過を早期に見つけるために有効な手法です。
ただし、すべてのプロジェクトに同じように適用すればよいわけではありません。プロジェクトの規模、管理の必要性、データ収集の仕組みを踏まえて活用することが重要です。
EVMが向いているプロジェクト
EVMは、進捗とコストを定量的に管理したいプロジェクトに向いています。
特に、以下のようなプロジェクトで活用しやすいです。
- 中〜大規模のプロジェクト
- 工数やコスト管理が重要なプロジェクト
- 経営層や顧客へ定量的に報告する必要があるプロジェクト
- 複数部門や外部パートナーが関わるプロジェクト
- WBSやスケジュール管理表が整備されているプロジェクト
- PMOが複数プロジェクトを横断管理するプロジェクト
一方で、非常に小規模で短期間のプロジェクトでは、EVMの運用負荷が大きくなることがあります。
また、成果物の完了基準が曖昧なプロジェクトや、実績工数を収集できないプロジェクトでは、EVMを導入しても数値の信頼性が低くなります。
EVMは、目的に応じて使うべき手法です。必要以上に複雑にせず、管理したいリスクや報告目的に合わせて導入しましょう。
EVMを定着させるには、PMだけでなくチーム全体の運用が必要
EVMを定着させるには、PMだけでなく、チーム全体で運用する必要があります。
PMが1人でPV・EV・ACを集めようとしても、実績データが現場から上がってこなければ機能しません。担当者が進捗や実績工数を入力し、PMが数値を確認し、必要に応じて関係者と対策を検討する流れが必要です。
定着のためには、以下を決めておくとよいでしょう。
- WBSと完了条件を共有する
- 進捗率の入力ルールを決める
- 実績工数やコストの収集タイミングを決める
- SPIやCPIを見る定例会議を設定する
- 数値が悪化した場合の報告ルールを決める
- PMOや管理職がレビューする場をつくる
EVMは、計算式よりも運用設計が重要です。チーム全体で同じ基準を持ち、継続的にデータを更新できる状態を作りましょう。
自社の進捗管理・コスト管理に課題がある場合は、仕組みから見直す
自社の進捗管理やコスト管理に課題がある場合、EVMだけを導入しても十分に機能しないことがあります。
たとえば、WBSが作られていない、スケジュール管理表が更新されていない、工数実績を取っていない、コスト情報が遅れて集計されるといった状態では、EVMの前提が整っていません。
まずは、以下の仕組みを見直すことが重要です。
- WBSの作成ルール
- 作業ごとの見積もり方法
- スケジュール管理表の運用ルール
- 実績工数やコストの収集方法
- 定例会議で確認する指標
- 遅延やコスト超過時の報告ルール
EVMは、プロジェクト管理の成熟度を高めるための有効な手法です。しかし、その前提となる管理の型がなければ、数値だけが独り歩きしてしまいます。
進捗管理やコスト管理を改善したい場合は、EVMだけでなく、WBS、スケジュール管理、課題管理、報告ルールまで含めて仕組みを整えることが大切です。
EVMについてのよくある質問
Q. EVMとは簡単にいうと何ですか?
EVMとは、プロジェクトの計画、出来高、実コストを比較し、進捗遅れやコスト超過を数値で把握する手法です。PV・EV・ACをもとに、SPIやCPIなどの指標を計算します。
Q. SPIとCPIの違いは何ですか?
SPIはスケジュール効率を示す指標で、EV÷PVで計算します。CPIはコスト効率を示す指標で、EV÷ACで計算します。SPIは進捗の遅れ、CPIはコスト効率を見る指標です。
Q. EVはどのように求めますか?
EVは、実際に完了した作業を予算価値に換算して求めます。基本的には、作業の予算価値に実際の完了率を掛けて算出します。ただし、完了率の基準が曖昧だとEVの信頼性が下がるため、WBSや完了条件の設定が重要です。
Q. EVMは小規模プロジェクトにも必要ですか?
小規模プロジェクトでは、EVMを厳密に運用すると管理負荷が大きくなる場合があります。ただし、PV・EV・ACの考え方を使って、進捗とコストを同時に見ることは有効です。プロジェクト規模に応じて、簡略化して活用するとよいでしょう。
EVMを使いこなし、進捗遅れとコスト超過を早期に発見しよう
EVMは、プロジェクトの計画値、出来高、実コストを比較し、進捗遅れやコスト超過を早期に把握するための管理手法です。
PV・EV・AC・SPI・CPI・EACなどの指標を理解すれば、感覚的な進捗報告ではなく、数値に基づいてプロジェクトの状態を説明しやすくなります。
一方で、EVMを機能させるには、WBS、完了条件、実績収集、定例レビューなどの仕組みが必要です。EVMの導入に迷う場合は、まず自社の進捗管理・コスト管理の型を見直しましょう。
タカハマプロジェクトでは、プロジェクトマネジメントについて学べるトレーニングコースを、ビギナー向け・PM経験者向けにご用意しております。EVMを含む進捗管理やコスト管理を体系的に学びたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
監修者紹介
高濱 幸喜(たかはま ゆきよし)
タカハマプロジェクト株式会社 代表取締役/PMP®資格保有者
20年以上にわたり、IT・通信・金融・製薬業・製造業・建設業など多様な業界でプロジェクトマネージャーとして活躍。PMBOKに基づくプロジェクトマネジメント手法を現場で実践し、数百件を超えるプロジェクトを成功に導いてきた実績を持つ。現在は研修やセミナーを通じて、次世代のプロジェクトマネージャー育成に注力。プロマネ道場では記事監修を担当し、読者に信頼性の高い情報を届けている。
タカハマプロジェクトでは、プロジェクトマネジメントについて学べるトレーニングコースを、「ビギナー向け」「PM経験者向け」にそれぞれご用意しております。まずはお気軽にお問い合わせください。
