2025年11月にPMBOK第8版がリリースされました。
「PMBOK第8版って、結局何が変わったの?」
「日本語版はいつ? PMP試験にも影響ある?」
そんな疑問を持つ方が増えています。
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、PMI(Project Management Institute:プロジェクトマネジメントの国際的な団体)が発行する、プロジェクトマネジメントの標準ガイドです。
本記事では、PMP資格保有者の高濱 幸喜(たかはま ゆきよし)さん監修のもと、PMBOK第8版の概要、変更点、第7版との違い、日本語版のリリース時期見込み、PMP試験への影響までを整理します。
PMBOK第8版について最初にポイントをお伝えすると、
①「原則を絞って実務に寄せた」
②「パフォーマンス領域を再編した」
③「プロセス群の考え方を“使いやすい形”で戻した」
の3点が挙げられます。
PMBOKは、初版からだいたい4年毎に新しい版がリリースされます。第7版がリリースされたのは2021年になりますが、その内容の変貌ぶりには正直戸惑いました。
言ってみれば、「実用書」から「経典」になった、というイメージです。
第8版では第7版の内容を残しつつ、第6版までの内容が復活しています。
おそらく、第7版での変化の大きさに、肯定的ではない反応がそれなりにあったのでしょう(笑)
PMBOK 第8版とは?【最新リリース概要】
PMBOK第8版は、PMIが定めるプロジェクトマネジメントの標準を、現代の開発環境(アジャイル/ハイブリッド/予測型)に合わせてアップデートした最新版です。第7版で強調された「原則・成果(アウトカム)重視」の流れを引き継ぎつつ、現場で使いやすい構造に整理されています。
まずは「PMBOK第8版=何か」「いつ出たか」「PDFデータはどこで取得できるか」を押さえて、次章からわかりやすく変更点の整理を行っていきます。
PMBOK第8版とは何か(定義)
PMBOKは、プロジェクトを成功に導くための「共通言語」と「判断基準」を提供するガイドです。特定の業界・手法に依存せず、どんなプロジェクトでも再現性高く進めるための考え方をまとめています。
PMBOK第8版では、単なる手順書というより、“原則(なぜ)”と“実務での焦点(どこを見るか)”をつなぐ設計が意識されています。第6版までのようにプロセスを暗記するだけではなく、「価値(Value)をどう届けるか」「状況に合わせてどうテーラリング(最適化)するか」が主題です。
なお、PMBOKと混同されやすい用語にPMIの標準(Standard)があります。かみ砕くと、Standardは“守るべき骨格”、PMBOKガイドは“現場で使うための説明書”の位置づけです。第8版はこの関係がより読み取りやすく整理されています。
PMBOK第8版はいつリリースされた?
PMBOK第8版(英語版)は、2025年11月に提供開始となりました。実務上は「PMI会員向けのPDF公開が先行し、その後に書籍が流通」という理解で問題ありません。
注意点は、「発売日」を何の発売日として言っているかです。
- PDFの提供開始(PMI会員向け)|2025年11月13日リリース
- 紙の書籍の発売(流通開始)|2026年1月13日にリリース
「2025年11月13日にPDF公開(済)」「紙版は2026年1月13日」と整理されている記事が多く、実務的にもこの把握がもっとも混乱が少ないのではないでしょうか。
今後は、日本語版の告知(PMI日本支部側のアナウンス)と、PMP試験改定(2026年7月)の動きがセットで進むと見ておくとよいでしょう。
PMBOK第8版のPDFはどこで入手できる?
PMBOK第8版のPDF入手ルートは、大きく以下の2つです。
1つ目は、PMI会員としてPMI公式サイトからダウンロードする方法です。会員特典として、PMBOKのPDFを取得できます。
2つ目は、PMI非会員として書籍(紙・電子)を購入する方法です。紙の本は流通が始まると、Amazonなどのオンライン書店で購入できるようになります。会社の学習支援制度で買う場合も、このルートで入手する方が多いでしょう。
補足として、日本語版PDFについては、第7版では「PMI日本支部会員向けに提供」という扱いがありました。第8版も同様の形になる可能性はありますが、現時点では“確定情報”を待つのが安全です。
このコメントを記載している時点で、私はPMIのサイトからPMBOKガイド第8版をダウンロードできています。
日本語版は、英語版がリリースされてからだいたい3か月程度経過してからリリースされるのですが、現在はWebブラウザの翻訳機能がかなり優秀になってきています。なのでまずは英語版を入手し、翻訳機能で内容を確認するのも良いかと思います。
PMBOKガイドをダウンロードするためにはPMIの会員になる必要がある点、お忘れなきよう。
PMBOK 第8版の主な変更点
PMBOK第8版の変更点は、「用語が変わった」よりも「読み方が変わった」と捉えると理解しやすいです。
第7版で「原則・パフォーマンス領域」に舵を切った一方、現場では「具体的にどう適用する?」が課題になりがちでした。第8版は、そのギャップを埋める方向で構造が整理されています。
ここから、変更点を3段階(要点 → 構造 → 実務強化)で整理します。
第8版で何が変わったのか(要点)
要点は次の3つです。
- 原則(Principles)が“絞られ”、実務で使いやすくなった
第7版の思想を引き継ぎつつ、現場で判断に使える形へ整理されています。
- パフォーマンス領域(Performance Domains)が再編された
第7版よりも、管理観点(ガバナンス、スコープ、スケジュール等)が明確になっています。
- プロセス群の考え方が“Focus Areas(注力領域)”として再登場
第6版のような“手順の暗記”に戻すのではなく、予測型/アジャイル/ハイブリッドのどれでも使える観点として再定義されています。
つまり第8版は、第7版の「バイブル(心構え)」に、第6版の「ハウツー(進め方)」のエッセンスを“使える形”で接続した、と捉えると全体像が掴めます。
原則・構造の見直し
第8版では、プロジェクトマネジメントの原則(Principles)と、実務の観点(Domains/Focus Areas)が、より一直線につながる構造になっています。第7版は「原則→パフォーマンス領域→モデル/手法/成果物」という流れでしたが、「で、次に何を読めばいい?」となりがちでした。
第8版は、“判断の軸(原則)”と“管理の観点(領域)”が対応しやすいため、現場の課題に合わせて読めます。たとえば、炎上しやすいのは「ステークホルダー調整」「スケジュール」「リスク」などですが、第8版はそうした観点で“読み分け”しやすい設計となっています。
また、プロセス群がFocus Areasとして戻ったことで、「計画 → 実行 → 監視」のような流れを、必要に応じて参照しやすくなります。第7版を読んで「抽象度が高い」と感じた方には、改善ポイントになるでしょう。
実務視点での強化ポイント
実務で効く強化ポイントには、次の2点が挙げられます。
1つ目は、ガバナンス(統治)と価値(Value)への接続が強いことです。
プロジェクトの成否は、WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)や工程表だけで決まりません。意思決定の仕組み、責任分界、承認フロー、ステークホルダー期待値など、上流の設計で決まります。第8版はこの観点を押さえやすい構造になっています。
2つ目は、最新テーマ(AI、PMO、調達など)を含む“現代のプロジェクト環境”を前提にしていることです。
現場では、生成AIで要件整理や議事録を高速化したり、外部委託・SaaS調達が増えたり、PMO(Project Management Office:複数プロジェクトを横断支援する組織)が関与するケースも多くなっています。第8版は、こうした前提に沿って読み解けるよう整理されています。
PMBOK第8版の構成を少しご紹介しておきます。PMBOK第8版は、大きく2つのドキュメントで構成されています。
1つは「プロジェクトマネジメント標準」、もうひとつは「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)」です。
ざっくりとしたイメージですが、第7版で書かれていたことが「プロジェクトマネジメント標準」、第6版で書かれていたことが「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)」にまとめられています。
第8版の章立ては、この記事の後半で紹介していますので、そちらをご確認ください。
第7版との違いをどう理解すべきか
「第7版と第8版、どっちを読めばいい?」は、今回も定番の悩みになるでしょう。
結論としては、第7版と第8版には目的の違いがあり、
第7版:原則と成果を重視し、テーラリングを促す
第8版:その思想を残しつつ、現場で迷いがちな論点を整理して使いやすくした
この差を押さえておくと、両方を“使い分ける”判断がしやすくなるのではないでしょうか。
第7版と第8版の違い
第7版と第8版の違いは、大きく3つです。
- 原則の数・扱い
第7版は12の原則を軸に、普遍的な行動指針を示しました。第8版は原則を絞り、より実務で判断に使える形に整理しています。
- パフォーマンス領域の再編
第7版は「ステークホルダー、チーム、計画…」のように、プロジェクトを成功させる観点で8つの領域を提示しました。第8版は、ガバナンスやスコープ、スケジュール、リスクなど、管理観点として読み取りやすい領域構成になっています。
- プロセス群の扱い
第7版はプロセス群やITTO(Inputs, Tools & Techniques, Outputs:インプット/ツールと技法/アウトプット)を“参照”として残しつつ、詳細は本体から外していました。第8版は、プロセス群の考え方をFocus Areasとして再び取り込み、「現場の使い方」につなげています。
この整理ができると、「第8版=第6版に戻った」ではなく、「第7版の思想を残しつつ、現場適用の導線を強化した」と理解できます。
第7版と第6版はもう使わなくてよいの?
第8版がリリースされたからといって、第7版と第6版は使わなくてよい。とは言い切れません。むしろ、役割によって“効く版”が違います。
- 第6版が効く場面:プロセス(49プロセス)やITTOを使って、計画・監視の型を固めたいとき
- 第7版が効く場面:原則とテーラリングで、状況に合わせた判断軸を鍛えたいとき
- 第8版が効く場面:原則と現場の論点(ガバナンス、スケジュール、リスク等)をつなげて、今のプロジェクトに適用したいとき
これからPMBOKを学習される方は、いきなり“全部読む”より、まず第8版で全体像を掴み、必要に応じて第6版の具体(WBS、見積り、リスク登録簿など)へ降りるほうが実務に直結します。
ミドル層PMはどう読むべきか
ミドル層(小〜中規模案件を回し始めたPM)が第8版を読むときは、「弱点補強の辞書」として使うのが合理的です。
- まず全体の構造(原則→領域→Focus Areas)を把握する
- 自分の案件で詰まりやすい論点を1つ選ぶ(例:ステークホルダー、スケジュール、リスク)
- その領域だけ読み、チェックリスト化する(会議体、判断基準、合意形成、監視指標など)
- 次の定例やレビューに“1つだけ”持ち込んで試す
PMBOKは読書で終わらせると効果が薄いです。「1領域→1つ改善」のサイクルで回すと、最短距離で成果に結びつけることができるのではないでしょうか。
まだPMBOKを読んだことのない方は、まず第8版を読まれることをお勧めします。
プロジェクトフェーズにおいて実施すべきことがまとめられており、しかもアジャイルなどの開発方式にも合うように構成されています。
第6版でもアジャイルを意識した記載にはなっていますが、やはりウォーターフォール開発向けのHow toの色が濃いのでそのあたりを意識して読むべきだと思います。
PMBOK 第8版とAI・最新プロジェクト環境
PMBOK第8版の文脈で外せないのが、AIを含む最新環境です。生成AIの普及で、要件整理、ドキュメント作成、リスク洗い出しなど、PM業務の一部は確実に高速化しています。一方で、情報漏えい、誤情報、著作権、説明責任といった“新しいリスク”も増えました。
第8版は、こうした現代的テーマ(AI、PMO、調達など)を前提に整理されている点が、過去の版との大きな違いになります。
PMBOK第8版でのAIの位置づけ
第8版は、AIを「便利ツール」として推すだけでなく、プロジェクト運営の前提条件として扱う方向に寄っています。実務で言えば、AIの活用は次の2層に分けると整理しやすいです。
- 作業の効率化(スピード):議事録要約、要求の整理、課題の分類、文書ドラフト作成
- 意思決定の品質(クオリティ):リスクパターンの補助、シナリオ比較、レビュー観点の抜け漏れ防止
ただし、PMが押さえるべきは“使い方”だけではありません。AIはアウトプットの根拠が曖昧になりやすいため、ガバナンス(利用ルール、機密情報の扱い、責任所在、レビュー手順)が重要です。
第8版を読むときも、「AIで何ができるか」より、「プロジェクトとして安全に使う条件は何か」をセットで考えながら読み進めると、現場に刺さる説明ができるでしょう。
AI時代にPMに求められる役割
AI時代にPMに求められる役割は、単なる進捗管理から「意思決定の設計者」へ寄っていきます。理由はシンプルで、AIが作業を速くしても、合意形成や責任の所在は自動化できないからです。
具体的には、次の力が重要になります。
- 問いの設計:そもそも何を成功とするか(価値・成果)を定義する
- 合意形成:ステークホルダーの期待値を揃える
- リスク統制:AI活用による新しいリスク(漏えい、誤情報)を管理する
- テーラリング:状況に合わせ、やり方を最適化する
AIは“PMの代わり”ではなく、“PMの判断を増幅する道具”です。だからこそ、PMは判断の軸(原則)と、管理の観点(領域)を持つ必要があります。
第8版は、その軸と観点を揃えるための教材として使えます。
AIについては、付録の中で「人工知能」というタイトルで独立して語られています。プロジェクトにおいてAIの活用はさらに当たり前のものとなっていきます。
付録ではありますが、時間を取って熟読することをお勧めします。
日本語版はいつ?PMP試験・実務への影響まとめ
記事公開時点(2026年2月時点)では、PMBOK第8版の日本語版について「確定日」を断言できる公式情報は見当たりません。一方で、PMP試験は2026年7月に改定予定で、学習計画は“日付あり”で立てられます。
この章では、日本語版のリリース見込み時期と、受験・実務への影響を「今できる行動」に落として整理します。
PMBOK第8版の日本語版はいつ出る?
結論、日本語版は現段階では「リリース待ち」状態です。第7版の日本語版はPMI日本支部側が取り扱っており、PMI本部からの配布ではありませんでした。第8版も同様の可能性があるため、PMI日本支部の告知を定期チェックしておきましょう。
日本語版が出るまでにできる現実的な選択肢は、以下の3つです。
- 英語版PDFで全体像を掴む(まず目次と章構造、用語を把握)
- 第7版+第6版で実務の型を固める(日本語版待ちの間に活用)
- PMP受験者は試験内容概要を中心に学習計画を立てる(試験はPMBOK準拠ではないため)
第8版の章立ては以下のようになっています。
原文の英語を翻訳しておりますが、実際の日本語版がリリースされるときには表現が異なっているかもしれません。
各章の細かい節については別の投稿で紹介したいと思います。
【プロジェクトマネジメント標準】
・序文
1.はじめに
2.価値提供のためのシステム
3.プロジェクトマネジメントの原則
4 プロジェクトライフサイクル
・参考文献・索引
【プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)】
- はじめに
- プロジェクトマネジメントのパフォーマンス領域
- カスタマイズ
- 入力と出力(全インプットとアウトプットをアルファベット順に列挙)
- ツールと技術(全ツールと技術をアルファベット順に列挙)
付録
X1 貢献者とレビュー担当者
X2 プロジェクトマネジメントオフィス
X3 人工知能
X4 調達
X5 PMBOK®の進化
「日本語版のリリースはいつ?」に振り回されるより、上記3点の活動を実施した方が、学習も実務も前に進みます。
PMP試験への影響はある?
「PMP試験への影響はある?」という質問への回答は、「影響はあります」となります。ただし、押さえるべき順番があります。
まず大前提として、PMP試験はPMBOKではなくECO(Exam Content Outline:試験内容の概要)に基づきます。そのうえでPMIは、PMP試験を2026年7月に改定し、新しい教材は2026年4月に提供すると明記しています。
ですので、受験時期によって計画の立て方が変わります。
- 2026年7月より前に受ける:現行ECO前提の学習を継続。第8版は“補助教材”として全体像把握に使う
- 2026年7月以降に受ける:新ECOと新教材に合わせて学習計画を組む(AIやサステナビリティ等の新テーマも意識)
「第8版を読まないと合格できない」ではなく、「受験時期で最適解が変わる」です。
実務にとっても第8版は、“今の環境に合わせた整理”として価値がありますが、資格はECO中心で設計するとブレずに進行できるでしょう。
PMBOK第8版をどう使うべきか
PMBOK第8版は、「原則を掲げるだけ」で終わらず、現場で迷いやすい論点(ガバナンス、スケジュール、リスクなど)へつなげやすい構造に整理された最新版です。第7版で抽象度の高さを感じた人ほど、理解しやすく恩恵を感じられるでしょう。
PMBOK第8版を実務で活用する場合、以下の使い方がおすすめです。
- まず第8版で全体像(原則 → 領域 → Focus Areas)を掴む
- 自分の現場課題に直結する領域を1つ選んで深掘る
- チェックリスト化し、次の案件で“1つだけ”試す
- 必要に応じて第6版・第7版へ参照を広げる
学びを成果につなげるには、「読む」より「試す」が重要です。もし独学で難しければ、体系的なトレーニングで“使える型”に落とすことも検討してください。
監修者紹介
高濱 幸喜(たかはま ゆきよし)
タカハマプロジェクト株式会社 代表取締役/PMP®資格保有者
20年以上にわたり、IT・通信・金融・製薬業・製造業・建設業など多様な業界でプロジェクトマネージャーとして活躍。PMBOKに基づくプロジェクトマネジメント手法を現場で実践し、数百件を超えるプロジェクトを成功に導いてきた実績を持つ。現在は研修やセミナーを通じて、次世代のプロジェクトマネージャー育成に注力。プロマネ道場では記事監修を担当し、読者に信頼性の高い情報を届けている。
タカハマプロジェクトでは、プロジェクトマネジメントについて学べるトレーニングコースを、「ビギナー向け」「PM経験者向け」にそれぞれご用意しております。プロジェクトマネージャーとしての成長を望む方は、下記ボタンよりお気軽にお問合せください。
