初めてプロジェクトを任されたとき、「どこから手を付ければよいのか」「今の進め方で本当に合っているのか」と不安に感じる方も少なくないでしょう。実際、プロジェクトがつまずく理由の多くはスキル不足ではなく、“適切な進め方を知らないこと”にあります。
プロジェクトには共通の型があり、基本の流れと管理ポイントを押さえるだけで進行の安定度が変わります。本記事は、現役のPMP資格保有プロジェクトマネージャー(PM)監修のもと、プロジェクトの進め方を5つのステップでわかりやすく整理しました。
さらに、PMBOKに基づくガイド、手法、ツールや、現場で起こりがちな失敗を防ぐコツも紹介しています。初めてPMを任された方でも“何を・どの順番で進めればよいか”が明確になる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧いただきプロジェクト成功のヒントとしてお役立てください。
プロジェクトの進め方|基本の5ステップ
プロジェクトは「立ち上げ → 計画 → 実行 → 監視・コントロール → 完了」という5つのステップで進みます。この流れは業界や規模が変わっても共通しており、プロジェクト管理の基礎となる考え方です。
特に重要なのは、序盤で目的とゴールを揃え、計画段階で“実行可能なレベル”まで作業を細分化することです。計画が明確であるほど実行が安定し、問題が起きた際も適切に軌道修正できます。
5ステップを理解することは、プロジェクト成功に向けた第一歩です。
ステップ1.立ち上げ(プロジェクトの定義)
立ち上げフェーズでは、プロジェクトの目的・ゴール・スコープを明確にし、関係者との期待値を整えることが重要です。これらが曖昧なままプロジェクトを進めると、判断基準が揺らぎ、手戻りや摩擦が増えてしまいます。
また、プロジェクトマネージャー(PM)・プロジェクトリーダー(PL)・プロジェクトメンバーの役割や意思決定の流れを決めておくことで、チーム内の混乱を防げます。プロジェクトの成功は、この立ち上げ段階でどれだけ「共通理解」をつくれるかによって大きく左右されるため、丁寧な準備が欠かせません。
ステップ2.計画(詳細計画の策定)
計画フェーズでは、WBS(作業分解構成図)を用いて作業を洗い出し、スケジュールや担当者を明確にします。ガントチャートなどで計画を可視化することで、全体の流れや依存関係が理解しやすくなります。
また、リスク、コミュニケーション方針、品質基準などもここで定義しておくことで、後半のトラブルを未然に防げます。計画づくりは時間がかかるものの、最終的には「手戻りを減らす最大の投資」となります。実行を安定させるためにも、丁寧に設計することが大切です。
ステップ3.実行(計画の遂行)
実行フェーズでは、計画に沿ってタスクを進め、成果物を形にしていきます。この段階で大切なのは、計画を盲信するのではなく、状況に応じて柔軟に調整する姿勢です。
現場では想定外の課題や変更が発生するため、適切なコミュニケーションと意思決定が求められます。また、PMはチームが安心して作業できるよう、障害の除去やサポートに注力することも重要です。
進捗状況を定期的に共有することで、チーム全体の認識をそろえながら前に進められます。
ステップ4.監視・コントロール(進捗管理と調整)
監視・コントロールは、プロジェクトを軌道に乗せ続けるための重要なフェーズです。
進捗・コスト・品質を定期的に確認し、計画との差異を把握します。遅延や課題が見つかった場合には、原因を分析し、優先度をつけて対策を行います。
また、ステークホルダーとのコミュニケーションをこまめに行うことで、変更や追加要望があった際にも適切な調整がしやすくなります。問題を早期に発見し、柔軟に対応することで、プロジェクト全体の安定性が向上します。
ステップ5.完了(終結・評価と振り返り)
完了フェーズでは、成果物の受け渡しや承認を行い、プロジェクトを正式に終結させます。
同時に、プロジェクトの成功要因や改善点を振り返る“Lessons and Learned”の実施が重要です。振り返りは次回のプロジェクトの品質を高め、組織全体の知識として蓄積されます。そして、メンバーへ感謝を伝え、成果を共有することも大切です。
この完了フェーズを丁寧に行うことで、プロジェクトの価値が最大化され、次の取り組みに生かすことができます。
世の中には実にたくさんのプロジェクトが実行されていますが、どのプロジェクトも、ひも解いていくと実は記事に紹介されているような55つのフェーズでプロジェクトは整理できます。
特にプロジェクトが開始される前の準備と、プロジェクト終結時の引き渡し、教訓事項の共有はとても大事です。
プロジェクトの進め方に役立つ手法・ツール
プロジェクトを効率的に推進するには、PMBOKにあるガイド内容、WBS、ガントチャート、PERT、CCPMといった手法・ツールを活用することが有効です。
、これらにより複雑な作業を整理し、抜け漏れを防ぐ助けになります。特に初めてPMを担当する方にとっては、プロジェクト全体の構造を把握するうえで役立ちます。
PMBOK「5つのプロセス群」と「10の知識エリア」
PMBOKは、世界的に標準化されたプロジェクトマネジメントの体系であり、プロジェクト進行の道しるべとなります。
第6版では「5つのプロセス群(立ち上げ・計画・実行・監視コントロール・終結)」と「10の知識エリア(スコープ・コスト・リスク・品質など)」で構成されていて、各フェーズで実施すべき事項が整理されています。この構造を理解しておくことで、プロジェクトのどの場面で何が必要かを判断しやすくなり、漏れやブレを減らせる点が大きなメリットです。
PMBOKはプロジェクトを体系的に理解する基礎となるため、プロジェクト管理ビギナーにとっても実務の指針として役立ちます。
PMBOK第7版について
PMBOK第7版では、従来のプロセス主義から「原則・パフォーマンス領域」を重視するアプローチへと進化しました。環境変化やプロジェクトの多様性に合わせて柔軟に適用できる点が特徴です。
第6版とあわせて理解することで、状況に応じた判断力が身につき、実務の幅が広がります。
WBSのタスク分解の基本
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクトを階層構造で整理し、大きな作業を小さなタスクに分解する手法です。タスクを分けることで担当範囲が明確になり、進捗管理や見積もりの精度が上がります。
また、タスクの粒度を揃えることでチーム内の共通認識が生まれ、作業の抜け漏れ防止にもつながります。WBSは計画フェーズの土台となる重要な手法です。
ガントチャートでのスケジュール管理
ガントチャートは、タスクの開始日・終了日・担当者・依存関係を視覚的に整理できるスケジュール管理ツールです。一覧で確認できるため、プロジェクト全体の流れが把握しやすく、遅延が発生した場合の影響範囲も素早く判断できます。
計画と実績を比較しながら進めることで、柔軟なスケジュール調整が可能になり、プロジェクトの安定性が高まります。
その他の手法(CCPM・PERT)
CCPM(クリティカルチェーン法)は、リソースの制約を考慮しながら計画を作成し、バッファを設定することで遅延リスクを抑える手法です。
一方、PERTは最短・最長・最可能性の3点見積もりに基づいてスケジュールを予測するため、精度の高いスケジュール管理が可能です。
どちらの手法も、WBSやガントチャートと組み合わせることで計画の信頼性向上に役立ちます。
今回ご紹介した手法は、PMBOKに記載されている中のごく一部を紹介したものです。ざっくりまとめると、以下の内容が記載されています。どれも重要な記載項目となります。
├─1. プロジェクトライフサイクル
├─2. プロセス群
├─3. 知識エリア
├─4. 標準プロセス
├─5. ツール&テクニック
└─6. 成果物テンプレート体系
プロジェクトタイプ別の進め方のポイント
プロジェクトの種類によって、つまずきやすいポイントや重視すべき項目は異なります。ITシステム開発では要件定義の精度が重要となり、社内プロジェクトでは関係者との合意形成が肝要です。
新規事業開発では仮説検証のスピードが成果を左右します。プロジェクトの特性に応じて進め方を調整し、それぞれのリスクを理解することで、より確実に成果へと近づけます。
ITシステム開発プロジェクトの進め方
ITプロジェクトでは、要件定義の明確化が成功の鍵となります。利用者の要望と必須要件を区別し、優先順位をつけることで後戻りを防ぎます。
開発手法(ウォーターフォールやアジャイル)によってコミュニケーションの頻度や管理手法が異なるため、適切な方法を選ぶことも重要です。また、テスト計画を早期に立てておくことで、品質確保にもつながります。
社内プロジェクト(業務改善・DX推進)の進め方
社内プロジェクトでは、“合意形成”が最大のポイントです。関係部署への説明や準備不足があると、実行段階で抵抗が生じます。そのため、早い段階から関係者を巻き込み、期待値を調整しながら進めていく必要があります。
小さな成功体験を積み上げることで理解を得やすくなり、改善施策の定着にもつながります。
新規事業・新製品開発プロジェクトの進め方
新規プロジェクトでは、最初から正解を求めず仮説検証を繰り返す姿勢が重要です。市場調査や顧客インタビューを通じて課題を掘り下げ、MVPで早期の実証を行うことで、ムダな工数を削減できます。
また、不確実性が高いため、リスク対応や意思決定のスピードも求められます。
プロジェクトが失敗する原因と対処法
プロジェクトが失敗する原因として多いのは、「目的が曖昧」「コミュニケーション不足」「リスク未対策」の3つです。これらはスキルではなく、進め方の問題であることがほとんどです。
逆に言うと、この3点を押さえておくことで成功率は大幅に向上するでしょう。ここから具体的な失敗パターンと対策を紹介します。
失敗パターン1.目的・目標が不明確
目的やゴールが曖昧だと、意思決定の基準がぶれて手戻りが増えます。対策としては、「なぜこのプロジェクトを行うのか」「成功の状態は何か」を言語化し、関係者と共有することが重要です。
SMARTなどの目標設定フレームワークを活用することで、具体的で測定可能な目標に落とし込めます。
失敗パターン2.コミュニケーション不足
情報共有が不足すると、認識違いや誤解が発生し、プロジェクトの遅延につながります。対策は、定例会やチャット、レビュー会など、コミュニケーションの仕組みを早い段階で整えることです。
さらに、議事録の記録や前提条件の共有を徹底することで、認識のズレが防げます。
失敗パターン3.リスク対策をしていない
リスクを洗い出さずに進めると、問題発生時の対処が遅れ、影響範囲が大きくなります。計画段階でリスク一覧を作成し、影響度と発生確率で優先順位付けを行うことが重要です。
さらに、週次レビューでリスク状況を確認し、必要に応じて対応策を更新していくことで、トラブルを未然に防げます。
プロジェクトがうまくいかない原因を挙げだすと、それこそプロジェクトの数だけ出てきてしまいます。
例えば、要件定義がやりきれないまま設計に入ってしまう、プロジェクトの対応範囲(スコープ)をあいまいなままプロジェクトを始めた、そもそもプロジェクト期間が短すぎる、などなど。
ただ、私の経験上プロジェクトがうまくいかない最も大きな原因は「コミュニケーション不足」だと考えます。
たったひとつの情報が共有されないために、大幅な手戻りが発生するなんていうことも起こりえます。
プロジェクトをうまく進めるコツ
プロジェクトを成功させるには、「計画の精度」「コミュニケーション」「リスク管理」「スコープ管理」「チーム運営」が鍵となります。
特に、最初の計画に十分な時間をかけ、状況に応じて柔軟に調整できる体制を整えることで、プロジェクト全体の安定性が高まります。
コツ1.最初の計画に時間をかける
計画フェーズに十分な時間をかけることは、プロジェクトの成功率を大きく高めます。WBSで作業を細分化し、依存関係を整理することで、現実的で実行しやすい計画を作成できます。
また、リスクの洗い出しと対応策の検討も早期に行うことで、後半でのトラブルを回避できます。
コツ2.コミュニケーションを密に取る
定例会やレビュー会、チャットツールなどを活用し、継続的なコミュニケーションを取ることで、認識のズレを防げます。特にオンライン環境では、情報の前提を丁寧に共有することが重要です。
コツ3.リスクを早期に特定し対策する
リスクは早く見つけるほど対処コストが下がります。計画段階でリスク一覧を作成し、週次で見直す仕組みを作ることで、変化に強いプロジェクト運営が可能になります。
コツ4.スコープクリープ(範囲の拡大)を防ぐ
追加要望が発生した場合は、影響範囲や必要工数を評価し、優先順位を含めた判断を行います。むやみに受け入れるのではなく、合意形成を行ったうえで調整することが重要です。
コツ5.チームメンバーを信頼し、任せる
PMが全てを抱え込むと、スピードも品質も下がります。役割分担を明確にし、メンバーの強みを生かすことで、チーム全体のパフォーマンスが向上します。
プロジェクトがうまくいかない最大の原因はコミュニケーション不足だと書きましたが、逆に言えば、円滑なコミュニケーションと情報共有を適切に実施すれば、プロジェクトはうまく回ります。 誰か特定の人、グループだけに情報が閉じないようにプロマネは注意を払う必要があります。
正しい進め方を身につければ、プロジェクトは安定して進行する
プロジェクトの進め方には共通する基本ステップがあります。「立ち上げ → 計画 → 実行 → 監視・コントロール → 完了」を理解し、適切に運用することで、プロジェクトは安定して前へ進みます。
また、PMBOK(第6版・第7版)やWBS、ガントチャートなどを活用することで、複雑なプロジェクトでも構造化しやすく、抜け漏れ防止にも効果的です。
さらに、プロジェクトの種類に応じて進め方を調整し、目的の明確化・コミュニケーション設計・リスク管理を丁寧に行うことで失敗を防げます。
初めてPMを担当する方でも、この記事で紹介したステップとコツを実践することで、プロジェクトを着実に前へ進める力が身につきます。
監修者紹介
高濱 幸喜(たかはま ゆきよし)
タカハマプロジェクト株式会社 代表取締役/PMP®資格保有者
20年以上にわたり、IT・通信・金融・製薬業・製造業・建設業など多様な業界でプロジェクトマネージャーとして活躍。PMBOKに基づくプロジェクトマネジメント手法を現場で実践し、数百件を超えるプロジェクトを成功に導いてきた実績を持つ。現在は研修やセミナーを通じて、次世代のプロジェクトマネージャー育成に注力。プロマネ道場では記事監修を担当し、読者に信頼性の高い情報を届けている。
タカハマプロジェクトでは、プロジェクトマネジメントについて学べるトレーニングコースを、「ビギナー向け」「PM経験者向け」にそれぞれご用意しております。プロジェクトマネージャーとしての成長を望む方は、下記のボタンよりお気軽にお問合せください。
