
「納期が守れない」「タスクの遅れが連鎖する」。そんな悩みを抱えるプロジェクト現場は少なくありません。その原因の多くは、スケジュールマネジメントの設計や運用にあります。プロジェクトを成功させるには、進行管理の土台となるスケジュールをどう設計し、どう実行するかがカギを握ります。
この記事では、PMBOKの基本に触れながら、プロジェクトスケジュールの立て方や、実際の進め方、さらに上手な人と苦手な人の違いまで、プロPMの視点でわかりやすく解説します。これからスケジュールマネジメントを学びたい方、スケジュールマネジメントについて改めて理解を深めたいという方は、ぜひ記事を最後までチェックしてください。
まずはスケジュールマネジメントの基礎知識を知ろう!
スケジュールマネジメントとは、プロジェクトの目標達成に向けて「いつ」「誰が」「何をするのか」を明確にし、計画的に進めるための手法です。作業の順序や所要期間、依存関係を整理し、全体像を可視化することで、納期遅れや手戻りのリスクを最小限に抑えます。
スケジュールマネジメントは、単なるカレンダー管理ではありません。プロジェクトの進捗を測り、問題の兆候をいち早く察知するための「モニタリングの仕組み」でもあるのです。まずはその基本的な考え方と、似た用語との違いを理解しましょう。
タイムマネジメントとの違い
タイムマネジメントが「限られた時間をいかに効率よく工夫して使うかの管理」であるのに対し、スケジュールマネジメントは「立てた計画に対して予定通り進んでいるかの管理」を指します。
前者は「どう効率よく働くか」、後者は「どう納期に向けて組織的に動くか」が主眼です。混同されやすい用語ですが、スケジュールマネジメントはWBSやリソース配分を前提とする、より構造的で広範なマネジメント領域です。
PMBOKにおけるスケジュールマネジメント
PMBOKでは、スケジュールマネジメントは10の知識エリアの1つに含まれています。「アクティビティ定義」「順序設定」「所要期間の見積り」「スケジュールの作成」「スケジュールのコントロール」の5つのプロセスで構成されます。
これらのプロセスは、単なる予定表作成ではなく、進捗状況を可視化し、遅延の予兆を早期に発見して対策を講じる仕組みです。PMBOKの考え方を理解することで、より精度の高いスケジュール設計と運用が可能になります。

仕事が遅れたり、納期に間に合わない人の多くは、ゴールまでになにをしなければいけないのかが整理できていないケースが多いように思います。
「やることはわかっている!」と言いながら実際間に合っていない人は、その「やること」が十分に詳細化できていないのだと思います。間に合わないことが多い人は、やらなければいけない仕事の内容をさらに分解してみましょう。
この作業は、実はWBSを作っていることに他ならないのです。
プロジェクトスケジュールの立て方と進め方
スケジュールを立てるうえで重要なのは、「思いつきではなく、計画に基づく管理」です。そのために欠かせないのが、「スケジュール管理表の作成手順の理解と実践」です。
以下で、その構成要素や作成手順、注意点を順を追って解説します。
スケジュール管理表作成の流れ
- プロジェクトスコープを整理する
目的・成果物を明確化
- WBSを作成する
作業を細分化して一覧化
- アクティビティ(タスク)を特定する
実行単位に分解
- 所要期間を見積もる
各タスクの時間を想定
- スケジュールを作成
依存関係を踏まえて並び替え
- リソースの割り当て
担当者や必要な人材を配置
スケジュール管理表作成時の注意点
スケジュール管理表作成では、スコープやWBSの粒度が曖昧なままスケジュールを立てないことが重要です。あいまいなタスクや過小評価された所要期間は、後々の遅延や調整コストを生みます。また、楽観的な見積もりや「とりあえず決める」ような進行では、実行フェーズでの手戻りが頻発します。
加えて、リソースの重複割り当てや祝日・休暇などの考慮漏れも見落とされがちです。正確性と実現可能性の両面から検証し、関係者と十分に擦り合わせたうえで進めましょう。
スケジュール管理表を作成するにあたって前項に記載したステップはどれも重要です。中でもとりわけ重要なのはWBSの作成だと考えます。
プロマネは、プロジェクト開始から終了まで、「何のタスクを完了すればこのプロジェクトは完了となるのか」を腹落ちさせる必要があります。この「腹落ち」はとても重要です。
専門的なタスクの詳細まで理解することは難しいですが、そのタスクによってなにをしようとしているのかという外観を理解することで、プロジェクト全体を自分のものとしていくのです。
なにをしているのか不明なタスクが存在するとその箇所はブラックボックスとなってしまい、それが後続のタスクにどうつながるかがわからなくなってしまいます。
少しくらい、と思われるかもしれませんが、小さくてもブラックボックスがあればあるほどプロマネの中に不安の種が残ってしまうことになります。
スケジュールマネジメントを上手く進めるコツ
計画を立てることと、実行して結果を出すことは別物です。スケジュールマネジメントを上手く進めるためには、立てた計画を「日々運用できる仕組み」に落とし込む必要があります。
それは、進捗を定期的にモニタリングする仕組みを整えること。遅延の兆候を見逃さず、原因を分析し、打ち手を早期に打てる体制があってこそ、管理は生きてきます。加えて、リソースの状況や外部要因に応じて計画を柔軟に見直す姿勢も大切です。
スケジュールマネジメントが上手い人と苦手な人の特徴
上手い人は、細かくスケジュールを引くのではなく「ずれた時にどう対応するか」を事前に考えています。進捗確認のタイミングや調整余地をあらかじめ仕込んでいるため、実行段階で慌てません。
一方、苦手な人は「計画通りに進める」ことにとらわれすぎ、調整が必要になったときに手が打てません。また、リスクの見積もりが甘く、楽観的な進行計画を立てがちな傾向があります。
上手い人がやっているポイント
スケジュール管理が上手な人は、「計画」「確認」「修正」のループを回しています。計画の見直しを前提に設計しているため、リスク対応や工数の追加にも柔軟に対応できます。
また、タスクに対して「誰が・いつまでに・どのように」やるのかを明確にし、進捗状況を定例ミーティングなどで可視化して共有する文化を根付かせています。
苦手な人がやってしまいがちなこと
スケジュールが苦手な人は「作業を詰め込めば終わる」と考えてしまいがちです。余裕のないスケジュールは、1つの遅れが全体に波及します。
また、タスクの依存関係やボトルネックを見落とし、「あとで調整すればいい」と場当たり的に動くため、結果的にスケジュールが破綻しやすくなります。感覚頼りではなく、論理的な設計と運用が求められます。
スケジュールの遅れについて、少し異なった観点のコメントをしたいと思います。スケジュールが計画どおりに進むことはたいへん望ましいことですが、進捗度の設定を適切に設定していなければ、「隠れ遅延」が発生していることを見逃したりします。
たとえば「未着手0% 作業中50% 作業完了100%」といったような進捗度を設定してしまうと、作業中は常に50%になってしまうので本当に予定通りなのか遅れているのかよくわからなくなります。
自分もエンジニア経験があるのでわかりますが、進捗がおくれていたとき、エンジニアは進捗をごまかそうとする時もあります。こういった事が発生しないよう、適切な進捗度を設定することも大事です。
あとは、普段からチームメンバーと密にコミュニケーションをとることで、オープンに報告ができるような雰囲気を作ることがとても大事です。
スケジュールはプロジェクトを成功に導くための“設計図”
スケジュールは、プロジェクトを成功に導くための“設計図”です。プロマネは、単にスケジュールを組むのではなく、実行可能な計画を立て、実行フェーズで柔軟に調整しながらゴールへと導く力、スケジュール管理力が求められます。
PMBOKに基づいた体系的なアプローチを理解したうえで、プロジェクトの特性やチームの状況に応じた実践力を身につけていくこと。これができれば、「納期が守れない」「タスクに遅れが出る」という状況を防ぐことができるのではないでしょうか。
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