
プロジェクト管理でよく用いられるツールに、「WBS」と「ガントチャート」があります。どちらもプロジェクトを効率良く管理するために重要な役割を果たすものですが、WBSとガントチャートの違いを正しく理解できている方は、意外と少ないのかもしれません。
この記事では、WBSとガントチャートの違いを詳しく解説し、それぞれのメリット・デメリットについても紹介します。
記事の監修は、プロのプロジェクトマネージャー(PM)として数々のプロジェクトを成功に導いてきたタカハマプロジェクト代表の高濱幸喜さんです。記事を読みWBSとガントチャートの違いを理解し、実際のプロジェクトでご活用ください。
WBSってどういう意味?
WBSは、Work Breakdown Structureを略したもので、日本語では「作業分解構成図」などと呼ばれています。Work(作業)をBreakdown(分解)したStructure(構成図)という意味です。
「プロジェクトを完了させるために、必要なタスクを階層的に整理しまとめたもの」が、WBSです。プロジェクト全体を細かいタスクに分解し、それぞれの作業がどのように構成されているのかを視覚的に整理します。
プロジェクトで実施すべきタスクに、抜けや漏れがないように効率よく進行・管理するために使われています。ガントチャートや工程表よりも前に作成し、タスクの全体像の理解、タスク管理に役立つツールです。
プロジェクト管理に欠かせないWBS
WBSは、プロジェクト管理に欠かせないツールであると言えるでしょう。
高濱さんは当メディアの別記事「WBSとは? プロジェクト管理手法「WBS」をわかりやすく解説します」で、“WBSは、PMがプロジェクトをコントロールしていくためにやらなければならない最重要タスクの一つ”と述べています。

プロジェクトのゴールを達成させるためには何をしなければいけないのかの道筋がWBSには表現されます。読み込むことによって、プロジェクトの全体像を腹落ちさせるためにはもってこいのツールです。
なので、WBSの理解はプロジェクトマネージャーにとっては絶対に欠かせないものとなります。
WBSを使うメリットとデメリットは?
プロジェクト管理に欠かせないツールであるWBSですが、使用するにあたってメリットやデメリットはあるのでしょうか?
WBSを使用する目的は、プロジェクト開始から完了までの作業を洗い出すことです。WBSを導入することで、プロジェクト全体の作業を明確化できることは大きなメリットとなりますが、ほかにもメリットはあるのでしょうか?
WBSを使うメリット
WBSは、ウォーターフォール型のプロジェクト管理には最適なツールです。WBSを使用すれば、全体タスクを可視化できるとともに、タスクの抜けや漏れを防ぐことにつながるため、これもメリットと言えます。また、プロジェクトの関係者全員でのタスク把握や役割分担も確認しやすいため、これもWBSを使用するメリットと言えるでしょう。
WBSのメリットまとめ
- ウォーターフォール型のプロジェクト管理に適している
- プロジェクト全体の作業の可視化
- 関係者全員でタスク、役割分担を把握しやすい
- タスクの抜けや漏れの防止につながる
WBSを使うデメリット
WBSを使うデメリットを挙げるとするならば、アジャイル型の開発を行う場合、WBSでのプロジェクト管理は向いていません。また、要件が定まらないなどの理由で明確にタスクを設定できないタイプのプロジェクト管理には向きません。小規模のプロジェクトだと、逆にWBS作成や管理がオーバーヘッドになってしまう場合があります。
そして強いて言えば、WBSの習熟には時間を要するという点も、デメリットに挙げられるかもしれません。
WBSのデメリットまとめ
- アジャイル開発のプロジェクト管理には向かない
- タスクを明確に設定できないようなプロジェクトの管理には不向き
- 小規模なプロジェクトでは逆にオーバーヘッドになりうる
- WBS作成の習熟には時間を要する
WBSは作らなくても何とかなる?
もしかしたら頭の中でタスクをイメージできてしまうような方にとっては、『WBSはつくらなくても何とかなるのでは?』と思われたかもしれません。プロジェクトの規模によっては、確かになくても良いケースもあるでしょう。しかし、大規模・中規模プロジェクトのスケジュール管理においては、全体のタスクを見える化してくれるWBSに意味がないなどということはなく、プロジェクト管理に不可欠なツールです。
スケジュール管理表は、WBSとこの後に紹介するガントチャートを活用して作成するもので、WBSを活用することでタスクの進捗管理に役立ってくれるツールとなります。WBSとスケジュール管理表の違いについては、下記の記事で詳細をご確認ください。
WBSを使う事のメリットは本当にたくさんあります。プロマネにとって、プロジェクトを開始してから終了するまでに「何をしなければならないか」を腹落ちさせることは、プロジェクトの成功に大きく影響します。
WBSの整理は、まさにプロマネにプロジェクトの全体像を腹落ちさせるために最適なツールでもあるのです。
タカハマプロジェクトでは、WBSを腹落ちさせるためのトレーニングも実施いたします。トレーニングメニューは以下を参照ください。
ガントチャートとWBSはどう違う?
プロジェクトのタスクを可視化したものがWBSに対して、WBSで洗い出されたタスクのスケジュール管理用のグラフがガントチャートです。作業内容やスケジュールがグラフ化されているため、タスクの開始・終了時期が一目で分かり、工程管理や進捗管理をしやすくしてくれるツールです。

上の画像のスケジュール管理表を見れば、WBSとガントチャートの違いが明確に伝わるのではないでしょうか。縦軸がWBSによって洗い出されたタスクで、横軸でグラフ化した日時を表すことが一般的となっています。
上画像のようなWBSとガントチャートを組み合わせたスケジュール管理表を用いることで、プロジェクトの関係者全体で進捗状況を管理・把握することが容易になります。
WBSとガントチャート、それぞれの「目的」と「表現方法」を正しく理解しておくと、両者の違いがより明確になるかもしれません。
WBSとガントチャートの目的と表現方法
WBS | ガントチャート | |
---|---|---|
目的 | タスクを階層的に整理すること | スケジュール管理 |
表現方法 | 表形式 | グラフ |
ガントチャートを作る利点とガントチャートの欠点は?
ガントチャートを作るメリットは、さまざまあります。
グラフ化されていることで、プロジェクト全体を把握しやすいことやスケジュールを視覚的に管理できること。また、作業毎の時間軸や工程も確認しやすく、プロジェクト完了後の振り返りがしやすいこともガントチャートを作成する利点に挙げられます。
ガントチャートのメリットまとめ
- プロジェクト全体を把握しやすい
- スケジュールが分かりやすい
- プロジェクト完了後のレビューが容易に
逆にガントチャートの欠点を挙げるとタスクの工数までは把握ができないこと、優先順位がわかりずらい点があります。また、長期にわたるプロジェクトの場合、スケジュールのバーが一画面で納まりきらず、スケジュールが逆に見にくくなるといったような点もデメリットと言えるかもしれません。
ガントチャートのデメリットまとめ
- タスクの工数は把握できない
- それだけでは優先順位がわかりずらい
- 長期プロジェクトではスケジュールの一画面での把握は困難
スケジュール管理表とWBSは、厳密には異なるものなのですが、一般的には同じ意味で使われていることが多いように思います。時には、同じWBSという言葉を使っていても、それぞれ頭の中にあるものが異なっていてトラブルが起きたりするケースもあります。
なので、WBSやスコープ、リスクといったようなプロジェクト用語は、プロジェクト開始時に定義をしてプロジェクト関係者間で意識を合わせておくことが大事です。
2つのツールを活用してプロジェクトを円滑に進行
この記事では、プロジェクト管理に役立つ2つのツールである「WBS」と「ガントチャート」の違いについて、解説しました。それぞれの意味を分かりやすく紹介し、WBSとガントチャートそれぞれのメリットとデメリットについてもお伝えしましたので、WBSとガントチャートを活用して効率よく円滑に進め、ぜひプロジェクトを成功に導いてください。
タカハマプロジェクトでは、「ビギナー向け」「PM経験者向け」にトレーニングコースをご用意しております。プロジェクトマネジメントの基本を知りたい方、プロジェクトマネージャーとしてスキルアップしたいという方は、下記のボタンよりお気軽にお問合せください。