PMBOK「5つのプロセス」とは?「10の知識エリア」とともに第7版との違いを解説

PMBOK「5つのプロセス」とは?「10の知識エリア」とともに第7版との違いを解説

プロジェクトマネジメントの世界標準として広く認知され、多くのプロジェクトマネージャー(PM)が活用している「PMBOKガイド」。第6版までに掲載されていた「5つのプロセス」は、最新の第7版で「12の原理・原則」に変更されましたが、プロジェクト管理において重要であることに変わりはありません。

この記事では、5つのプロセスについて詳しく解説します。記事の監修は、PMP資格を所有しプロマネとして数々のプロジェクトを成功に導いてきたタカハマプロジェクト代表の高濱幸喜さんです。5つのプロセスの解説とともに、第6版までに掲載されていた10の知識エリア、第7版に掲載されている12の原理・原則との違いを紹介します。

「5つのプロセス」とは?

PMBOKに記載されていた5つのプロセスとは、プロジェクトを効率的に進めるための5つの段階のことです。

PMBOK第6版では、プロジェクトの開始から終了までの流れを「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」という5つの段階に分類して定義しています。

5つのプロセスの目的は、プロセス管理によって「QCDを管理しプロジェクトを成功に導くこと」です。

QCDとは?

QCDとは、プロジェクト管理の基本となる以下の3つの要素のことです。

  • Quality(品質): 成果物が要求された品質基準を満たしているか。
  • Cost(コスト): 予算内でプロジェクトを完了できるか。
  • Delivery(納期): スケジュール通りに進行し、期限内に完了できるか。

PMBOK「5つのプロセス群」

次にプロジェクト全体を管理し、円滑に進行していくために重要な5つのプロセスを簡単に解説します。

  1. 立ち上げ(Initiating)

プロジェクトの目的を明確にし、必要なリソースや関係者を特定する段階。

  1. 計画(Planning)

プロジェクトの成功のためにスケジュール、コスト、品質、リスクなどの詳細な計画を策定する段階。

  1. 実行(Executing)

計画をもとにプロジェクトを実施し、成果物を作成する段階。

  1. 監視・コントロール(Monitoring and Controlling)

進捗やコストを監視し、必要に応じて調整を行う段階。

  1. 終結(Closing)

プロジェクトの成果を確認し、正式に終了する段階。

PMBOKの5つのプロセスを適切に運用することで、品質・コスト・納期のQCDのバランスを取りながらプロジェクトを円滑に管理することができます。

高濱 幸喜

5つのプロセス群は、プロジェクトの進行に合わせて定義されています。

「プロジェクト準備期間」、「プロジェクト実施期間」、「定常業務」という時間の流れ(フェーズ)でとらえたとき、5つのプロセス群は、以下のように当てはまります。

そもそもPMBOKとは? 「PMBOKガイド」をおさらい

PMBOKガイドとは、Project Management Body of Knowledgeの頭文字を略したもので、“プロジェクトマネジメントの知識体系”をまとめたガイドライン(参考文献)です。PMBOKは「ピンボック」と読みます。

PMBOKガイドは、アメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute)が、プロジェクトマネジメントの普及拡大を目的として作ったものです。プロジェクトの管理を行うために必要な管理の種類の定義、各管理で有効なツールや技法が紹介されています。

プロマネにとってのバイブルとも言える参考文献であり、多くのPMがPMBOKガイドを活用し、効率的かつ効果的にプロジェクトを管理しています。

PMBOKガイドの最新は第7版

PMBOKガイドは定期的に改訂されており、最新版は2021年に発行された第7版です。本記事のテーマである「5つのプロセス」は、第7版では「12の原理・原則」に変更されています。

PMBOKガイド最新第7版と第6版の違い

第6版までは「ウォーターフォール型」や「アジャイル型」といったシステム開発手法に応じたプロジェクト管理の具体的なツールや手法の記載を重視した構成でした。しかし、第7版ではプロジェクトに関わる人たちが、どのような姿勢でプロジェクトに臨むかという“原則的な心構えを定義”する内容に変わっています。

第6版第7版
プロジェクトのゴールQCDの達成価値の提供
基本構成ハウツーバイブル
プロジェクトマネジメント標準5つのプロセス12の原理・原則

第7版では、新たに「テーラリング」専用の章も設けられています。これもPMBOKガイド第6版と第7版の違いの一つです。

テーラリングの重要性について、別の記事で詳しく紹介していますので下記リンクよりご確認ください。

第7版で5つのプロセスは「12の原理・原則」へ

お伝えしてきた通り、「5つのプロセス」は第7版で下記の「12の原理・原則」に変わっています。

PMBOKガイド「12の原理・原則」

  • スチュワードシップ(Stewardship)
  • チーム(Team)
  • ステークホルダー・利害関係者(Stakeholders)
  • 価値(Value)
  • システム思考(ValuSystem Thinking)
  • リーダーシップ(Leadership)
  • テーラリング(Tailoring)
  • 品質(Quality)
  • 複雑さ(Complexity)
  • リスク(Risk)
  • 順応性と柔軟性(Adaptability and Resilience)
  • 変革(Change Management)

5つのプロセスと同様に大切な「10の知識エリア」

「10の知識エリア」は、プロジェクトマネジメントの各プロセスで考慮すべき重要な領域です。

  1. 統合マネジメント
  2. スコープ・マネジメント
  3. スケジュール・マネジメント
  4. コスト・マネジメント
  5. 品質マネジメント
  6. 資源マネジメント
  7. コミュニケーション・マネジメント
  8. リスク・マネジメント
  9. 調達マネジメント
  10. ステークホルダー・マネジメント

第6版まで5つのプロセスと結びついていた10の知識エリアですが、第7版では「パフォーマンス領域」に変更されました。しかし、10の知識エリアも5つのプロセス同様、重要なものであることに変わりはありませんので、こちらも変わらず理解を深めておきましょう。

PMBOKには認定資格もあるの?

PMBOKガイドがベースになっているプロジェクトマネジメントのスキルを証明する資格には、「PMP(Project Management Professional)」があります。PMPは、PMBOKガイドを発行するPMIが実施する国際的に認知されている資格で、プロジェクトマネージャーのスキルを高める上で非常に有益な資格です。

PMP受験には、学歴に加えてプロジェクトに携わった経験が必要になり、研修の受講も必要になります。また、PMP資格取得のために必要な勉強時間の目安は、おおよそ100時間と言われています。

受験費用の高さもあり、取得の難易度が高い資格と言えますが、国際的にPMとしてのスキルを有していることを証明できる非常に価値のある資格です。プロマネとしてキャリアアップを目指しているという方は、PMPに挑戦してみてはいかがでしょうか。

プロジェクトの進め方や管理方法は、時代と共に変化しています。

これまで主にウォーターフォールというシステム開発手法をベースとしたハウツーを提示していたPMBOKも、新しい開発手法や考え方を取り込む必要が出てきました。単純にハウツーを追加すると膨大なガイドとなってしまうため、すべてのプロジェクトに共通する心構えや考えをまとめたものをPMBOKガイドとし、各手法やハウツーは個別のガイドでまとめるという形に方針を変更したのだと私は理解しています。

なので、新しいPMBOKの内容だけではなく昔の内容も変わらず重要となります。

5つのプロセスも変わらず重要!

この記事では、PMBOKガイドに記載されていた「5つのプロセス」について詳しく解説しました。最新版で「12の原理・原則」に変わったものの、5つのプロセスがプロジェクト管理の基本的な考え方であることは変わっていません。より高いレベルのプロジェクト管理実現のために、5つのプロセスも理解を深めておきましょう。

プロジェクト管理について学びたいという方に向けて、タカハマプロジェクトでは「ビギナー向け」「PM経験者向け」にそれぞれトレーニングコースをご用意しております。プロジェクトマネジメントの基本を知りたい方、プロジェクトマネージャーとしてスキルアップしたいという方は、現役のプロマネからプロジェクトマネジメントについて学べるトレーニングをぜひご活用ください。

各トレーニングについての詳細は、下記のボタンよりお気軽にお問合せください。