WBSとは? プロジェクト管理手法「WBS」をわかりやすく解説します

WBSとは? プロジェクト管理手法「WBS」をわかりやすく解説します

プロジェクトマネジメントに携わっている方なら、誰しもが「WBS」という言葉を知っているでしょう。ただ、まだプロジェクトに関与する前は、会議の場で初めて「WBS」という言葉を聞いて、慌てて検索したという経験をお持ちではないでしょうか。

この記事では、これからプロジェクトに関与していく若い世代に向けて、プロジェクト管理手法の一つWBSについてわかりやすく解説します。WBSを使用する目的や、同時によく聞くスケジュール管理表との違い、WBSの作り方についてもご紹介しますので、ぜひ記事を最後まで読んでWBSについて理解してください。

プロジェクトマネジメントに欠かせない「WBS」とは

WBSとは、プロジェクト管理手法の一つで、日本語では「作業分解構成図」などと呼ばれています。Work Breakdown Structureを略したもので、Work(作業)をBreakdown(分解)したStructure(構成図)という意味です。

作業分解構成図をより簡単に言えば、
“プロジェクトを完了させるために、必要なタスクを階層的に整理しまとめたもの”
という表現が、わかりやすいかもしれません。

プロジェクトを効率よく進めていくために、作業の整理や進捗管理、作業分担を階層的に明確化した図、それがWBSです。作業の抜けや漏れをなくすという面でも活用されているプロジェクトマネジメント手法の一つです。以下は、WBSの例です。

WBSの例(赤枠内がワークパッケージ)
図-1

上の図-1は、プロジェクトに必要な要素を分解したものです。各要素を分解した最下層(図の赤枠で囲ったタスク)のことは、ワークパッケージといいます。

WBSは、図-1のような表現の仕方もできますが、一般的には下の図-2のようなリスト形式で表現されます。

リスト形式のWBSの例
図-2

WBSは何のために使う? WBSを使用する目的は?

WBSは、プロジェクトで実施すべきタスクの抜けや漏れがないように効率よく進行・管理するために使われています。

WBSを使用する目的は?

WBSを使用する目的は、プロジェクト開始から完了までの作業を抜け漏れなく洗い出すことにあります。

WBSを導入することで、プロジェクト全体の作業を明確化できること、また精度の高い見積もり作成のネタにできる点も、WBSを作成する目的と言えます。

高濱 幸喜

プロマネが、プロジェクトをコントロールしていくためにやらなければならない最重要タスクが「WBSの作成」です。

プロジェクトが開始してから何を行えば終了するのかを腹落ちさせるために、プロマネ自身がWBSをとりまとめなければなりません。

WBSを作成し、プロジェクトで実施すべきタスクを理解することによって、プロマネの不安はかなり和らぎ、冷静になれます。

WBSとスケジュール管理表は何が違う?

WBSとともに、もしくはWBS以上によく耳にするワードが「スケジュール管理表」ではないでしょうか。中には、『WBSとスケジュール管理表って同じ意味じゃないの?』と思われている人もいるかもしれません。

WBSとスケジュール管理表は、同じ意味で用いられることが多いのですが、厳密には異なります。

WBSは「作業を細分化し見える化したもの」であり、スケジュール管理表はWBSで洗い出された作業にガントチャートと呼ばれるスケジュール管理用のグラフを合わせて、タスクのスケジュール進捗等を管理できるように表現したものです。作業やスケジュールがグラフ化されていることで、工程管理や進捗管理をしやすくしてくれるものです。

スケジュール管理表とは?

スケジュール管理表とは、WBSとガントチャートを組み合わせて、プロジェクトの進捗状況を管理・把握するためのスケジュール表のことです。

スケジュール管理表の例を、画像で紹介します。

WBSとガントチャートを組み合わせたスケジュール管理表

WBSは意味ない?

「WBSは意味がない」などということは、ありません。

WBSで全体の作業を明確にすることではじめて正確なスケジュール管理表を作成し、プロジェクト管理に活用することができます。つまり、“WBSは「スケジュール管理表の一部」”なのです。なので、WBSもしっかり作成するようにしましょう。

プロジェクトによっては、「WBS」というワードがスケジュール管理表の意味で割と使われています。

プロジェクト管理にあまり携わっていない方ほど混同されていることが多いので、本来のWBSの意味で言っているのか、スケジュール管理表の意味なのか間違えないようにしましょう。

WBSの簡単な作り方を、ステップ毎にお教えします

ここからは、WBSの作り方を紹介します。

WBSの作り方には、「成果物指向型」と呼ばれる最終成果物の完成から逆算して作業を分解した作り方と、「プロセス指向型」と呼ばれる作業(プロセス)を分解していく作り方があります。この記事では、成果物指向型の作り方を紹介します。

成果物指向型のWBSは、大きく下記の4つのステップで作成していきます。

成果物指向型のWBS、4つのステップ

  1. 成果物の設定
  2. 作業の分解
  3. 作業優先度の設定
  4. 作業工程の構造化
1.成果物の設定

成果物指向型のWBSでは、まずプロジェクトの最終的な成果物、目標を明確にします。

何を成果物とするかは、そのプロジェクトによってさまざまですが、ステークホルダーとのコミュニケーションを通して一緒に決めることが最も重要と言えるでしょう。

2.作業の分解

成果物が明確になった後は、最終的な目標を達成するためにどんなタスクが必要か大きい項目を洗い出します。この大きい項目で洗い出した各項目に対し、さらに必要な作業を詳細に分解していきます。

このタスクはリスト化(見える化)します。そして、プロジェクトマネージャーが理解し、管理する必要のあるレベルまでタスクの分解を繰り返します。

3.タスクの前後関係の整理

作業リストが完成したら、作業の前後関係を設定し、工程をつなげていきます。

洗い出されたすべてのタスクには、必ず先行タスクと後続タスクが存在します。前後関係を洗い出し、プロジェクト開始から完了まで、すべてのワークパッケージの前後関係を明確にします。

4.タスクの所要工数の確認

前後関係の整理が済んだら、各タスクに必要な工数を洗い出します。これは、実際にタスクの内容がわかる人にヒアリングすることで確認を行います。そして、全タスクに対して工数を確認していきます。

WBS作りが苦手な方は、テンプレを利用するのも手です

WBSの作り方を紹介しましたが、WBSは作成すること自体に多くの時間と手間を要するものです。そこで便利なのが、WBSの作成をサポートしてくれるプロジェクト管理ツールです。テンプレート機能やガントチャート機能を搭載したツールも多くあり、効率良く高精度なWBSを作成することができます。

プロジェクト管理ツールは高額な製品も多いため、「導入のハードルが高い」と思われる方もいるかもしれません。そんな方は、無料のテンプレートを活用するというだけでも、WBS作成の負担を減らすことができます。「WBS テンプレ」などのワードで検索すれば、多くのテンプレートを見つけることができますし、Google スプレッドシートにもガントチャートのテンプレートが用意されています。

WBSのテンプレートを検索して活用する、という紹介をしていますが、実際には社内で過去の類似プロジェクトで作成したWBSを参考にするという方法が最も有効です。

WBSはプロマネが管理しやすいようにタスクを分解すればいいので、実はプロマネの癖というか、スタイルが出てきます。WBS作成上達のためには、やはりWBS作成をできるだけ多く経験するしかないと考えます。

プロジェクトマネージャーになるには

ここまでお読みになって「プロジェクトマネージャーになりたい」と思った方に、プロジェクトマネージャーになるためどうしたらいいのかをお伝えします。

プロジェクトマネージャーになる方法は、さまざまな形がありますが、

  1. 実務経験を重ねる
  2. スキルアップをし、プロジェクトリーダー(PL)になる
  3. PLとして実績を積み、プロジェクトマネージャーにステップアップ

が、基本的なステップとなっています。

プロジェクトマネージャーにステップアップするきっかけには、新プロジェクト発足の際にアサインされたり、公募制度の応募による採用、転職があります。

プロジェクトマネージャーに必要なスキル

プロジェクトマネージャーに必要なスキルは、プロジェクトマネージャーになるまでのキャリアで身につけられているもの、身につけていなければいけないものが多いです。最も大切なスキルは、プロジェクトマネージャーの仕事内容をしっかりマネジメントするスキルですが、加えて変化に対応できる柔軟性も大切なスキルです。

またプロジェクトマネージャーの仕事は、成功時には大きなやりがいを感じられるポジションですが、そこまでの過程が激務であるケースも少なくありません。ストレス耐性の高さもプロジェクトマネージャーに必要なスキルと言えるでしょう。

プロジェクトマネジメントの経験

プロジェクトを管理し成功に導くことがプロジェクトマネージャーの仕事ですが、プロジェクトマネジメントの経験は、あらゆる仕事において役立つものになります。

この記事でご紹介してきたように、プロジェクトマネージャーには業務に関する専門的な知識だけでなく、コミュニケーションスキルやスケジュール管理能力、コストやリスク管理といった能力も求められます。

プロジェクトマネジメント経験を通して得たスキル、経験は、この先のキャリアで大きな財産になるはずです。

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの成功に対して全責任を負う役割でもあります。そのためプロジェクトの中では、たいへん重要な役割であると言えます。

大きいプロジェクトについては社内からリーダーや管理職の方がプロマネを担当してプロジェクトを進めるケースが割と多いですが、プロのプロマネに委託してプロジェクトを進めるケースも少なくありません。

プロジェクトは、似たものはあっても、ひとつとして全く同じものはありません。それであっても、共通して活用できるプロジェクト管理ツールやハウツーがあります。 これらを駆使することによってプロジェクトを成功に導くことができたときの喜びは、何物にも代えがたいものがあります。

やりがいのあるプロマネとしてのキャリアをぜひ目指していただきたいと思います。

WBSの作り方をマスターしプロジェクト管理に活用しよう

この記事では、プロジェクトマネジメントに欠かせないWBSについて、わかりやすく解説しました。またWBSとガントチャートの違いや、WBSの基本的な作り方についてもお伝えしています。正しいWBSの作り方をマスターし、プロジェクト管理にご活用ください。

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